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【武装神姫】セッション2-4【SW2.0】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm18827180
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【武装神姫】セッション1-3【SW2.0】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm18179759
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{Eins} 前回はルーナ…『Zwei』を調べた。 中身は『Vier』と『Drei』とは多少違っていたので新しい情報は手に入った。 でも前回も残念ながら俺の記憶に関する事が書かれていなかった…。 畜生…いつになったら解るんだよ。 …落ち着け、俺。 ここで舞い上がっても仕方ないじゃないか。 最後の『Eins』のセキュリティーを突破する事に成功した。 ホント、セキュリティーを突破するのにどれだけの労力を使ったことやら…。 「…どんな事が書かれているかな?」 注意深く見ながら次々に色々な項目を見ていく。 『Zwei』と同じく製造の日記みたいな感じに書かれていたが…量は少し多いみたいだ。 西暦2027年12月×日 我が社が武装神姫というプロジェクトに参加する事になった日。 そこで我が社はオリジナル、つまり試作型MMS(Multi Movable System)を開発する事になった。 試作型の数は四体。 西暦2029年2月1×日 この時はまだ武装神姫は一般に公開されていなかった。 『Eins』は『Zwei』と一緒に誕生したMMS。 『Eins』の識別はAngel Type Version One。 西暦2030年4月2×日 攻防システムでトレーニングした結果。 近距離能力: ◎ 中距離能力: ◎ 遠距離能力: ◎ 攻撃能力: ○ 防御能力: ○ 加速能力: ◎ 最高速度能力:◎ 今までに無い最高の結果となった。 これは我々研究チームに多大な期待をもたらしてくれそうだ。 西暦2030年8月×日 『Eins』と平行に製作された『Zwei』は近距離奇襲攻撃に特化したMMSに決定された。 暴走の危険は検知され危険度は99%。 だが暴走の危険に注意し、このまま更なる研究が続けば、通常のMMSよりも数十倍の能力を引き出されると肯定したが油断は禁物。 危険度が高すぎる。 厳重に警戒し注意を怠ってはならない。 他の武装神姫に比べ、体重は通常。 西暦2030年10月×日 『Eins』の状態が急変したのを我が社のスーパーコンピューターが察知。 人間の『感情』というものを身につけた。 原因は不明、この事がきっかけとして『Eins』と平行に製作されたいた『Zwei』とは別々の研究をされる事になった。 今だに何処にも支障がない『Zwei』はそのままプロジェクト研究を続ける。 『Eins』は一時中断、西暦2030年10月2×日に別のプロジェクト研究に移行。 西暦2030年11月×日 この研究に置いて『感情』というモノは邪魔である。 そこで我々は特別にもう一体、素体ボディを用意する事にした。 『感情』というデータだけを移しかえるためだ。 これで暴走の危険度も減少してくれたら尚いいことなのだが…。 期待は出来ない事は明白だ。 西暦2030年11月1×日 まったくの同型を用意するのに困難したが、無事に用意できた。 ただし、同型といっても大きさは人間サイズである。 これは別のプロジェクトで使用するための物だったが、急遽こちらに手配してもらったのだ。 この際仕方ない。 早速、データを移行するための研究が進められた。 西暦2030年11月2×日 準備は整った。 『Eins』が眠りについてる頃に密かに実験を開始した。 だが、ものの見事に実験は途中で失敗。 実験中、異変に気づいた『Eins』は目を覚まし、そこにいる研究員を6名を皆殺しにしたのだ。 どうやらこれは暴走ではなく元々ある自己防衛が働いたものだと予測。 ただ、『感情』は途中まで実験していた為に『感情』というデータは半壊状態になる。 中途半端なデータ移行実験のせいでオリジナルのデータも破壊されたかもしれないと予測。 もう一つの素体ボディについては現状維持のまま保管された。 西暦2030年11月2×日 本来、『Eins』のノーマル武装で敵を全滅する予定だったが西暦2030年11月2×日に起きた事件で装備品をつける事によって拒絶反応がでてしまった。 そこで我々は密かに開発していた装備品を装着する事にした。 元々市販品になる予定の物と酷似しているが、その理由は目立たないためだ。 装備品の詳細は下記に記されている通り。 腰部装甲:ヴィーゼ・STHP・スカート スカートアーマー。 とても頑丈で空対空、空対地、地対空、どんな場所で適応できる。 実用性と未来的デザイン、その両方を兼ね備えた素晴らしいパーツだ。 胸部装甲:レイディアントアーマー 胸部アーマー。 以下同文。 手首部装甲:レイディアントリストガード 手首アーマー。 以下同文。 リアパーツ&背部装甲:レイディアントリアプレート リアパーツでもありながら背部装甲でもある背後アーマー。 背中の六枚の帯状パーツは自由に可動し敵の攻撃を防ぐ。 以下同文。 以上である。 ただこの四つのパーツは『Eins』に装着したら『Eins』のデータが入り込み二度と他の神姫には使えないのが難点だ。 さらにこのパーツは装着した神姫がパーツデータを改ざんできるので上記に書かれているデータを信用してはならない。 もうすでに『Eins』は何等かの細工をしているに違いない。 ついでに、実験で失敗したもう一つの素体ボディにもサイズは違っても同型のパーツを装着させた。 西暦2030年12月2×日 西暦2030年11月2×日に実験を行ってから『Eins』は我々の命令を完全に否定するようになった。 仕方なく直接データを改ざんや調査しようとすれば、再び自己防衛が働き研究員を殺す。 それどころか、『Eins』の研究部屋に入室しようとすれば瞬時に殺される。 拘束プロテクトが働いているにも関わらず、武器も持たずに人間を紙をシュレッダーに入れたように細切れにしてしまうのだ。 レプリカ神姫にも同様の結果になる。 もう迂闊に近づく事が出来なくなってしまった。 故に研究も一時的に現状維持に決定した。 西暦2031年5月1×日 『Eins』が原因不明の暴走。 研究員14人、機動隊32人を惨殺。 『Eins』の暴走を停止するため『Zwei』に迎撃させたが、残念ながらいまひとつ成果は得られなかった。 こうなってしまったら『Drei』『Vier』も同じ結果になると推定され試作型MMSによる迎撃は不可能と判断。 暴走してから数十分が経過した時、『Eins』の近くに居た一人の少年によって『Eins』の暴走を止める事に成功した。 『Eins』が装着していた装備品は解除され現在の装備品は厳重に保管された。 予測通り、装備品は『Eins』が改ざんしたデータばかりだった。 このデータをもう一つの素体に移植。 少年の名は…ある研究員の保護により記載されていない。 西暦2031年5月1×日 上記に『Eins』は一人の少年に暴走を止められたと書いてあるが、何故今までその少年がこの研究所に居たのかは機密事項扱いなっていた。 プライバシー保護という名目もあるが、腑に落ちない研究員が大半だ。 更にその少年は毎日、ここの『Eins』に会って話していたという。 本来ならば人間が近づくだけで殺されたというのに、何故『Eins』は少年を殺さなかったのか…原因は不明である。 さらに『Eins』の場所は24時間体制で六つの監視カメラで監視されているのに、少年が『Eins』の場所に侵入した画像が映っていなかったのだ。 ここで少年が言っていた『『Eins』に会って話していた』という言葉が嘘になる。 だが、嘘発見機に掛けても結果は嘘をついていなかった。 原因不明な事ばかりで我々研究員の頭を悩ませる事ばかりである。 西暦2031年5月1×日 突如の『Eins』の暴走事故により、試作型MMSの研究は一時的に凍結。 研究の中断は余儀なくされ、確定は確実。 『Eins』『Zwei』『Drei』『Vier』はこの日をもって完全凍結された。 西暦2040年5月1×日 武装神姫が稼動、発売されてから9年。 ※神姫タイプ以外のMMSはこの限りではない。 武装神姫のシステムが総合的にバージョンアップし、ある程度安定してきた。 しかも武装神姫の人気は徐々に上がっていくのを見て我が社の試作型MMS研究が再開される事が決定した。 しかし、いくらバージョンアップしたとはいえ、9年前同様に暴走してしまったら危険。 我が社は試行錯誤を繰り返した結果、試しに人間と生活させる事にした。 人間と一緒に生活させれば、我々人間がどのように生きているのか生活面の知識が増えるだろうと予測。 そうする事によって我が社の四体の試作型MMSはこの世の中の知識を身につける。 そうすれば、人間がMMSをどのように使役しているか、自分達がどのような存在か知る事になる。 結果、試作型MMSは自分達がどのような存在か理解し、無駄な抵抗をしないまま研究できる。 しかし、ここで少し問題が発生した。 この四体の試作型MMSと一緒に生活する人間を決めなければならないという問題。 我が社の人員から選んでもよかったのだが、9年前の事故によって誰もが拒否した。 だが、斉藤朱美研究員のスカウトによって一般人がこの大役を受け持つ事になった。 現在は 斉藤朱美研究員の弟、天薙龍悪に四体の試作型『Eins』『Zwei』『Drei』『Vier』を監視させ、今に致る。 ここで文章が終わっていた。 「…おいおい。マジかよ…これ…」 『Eins』の過去は悲惨過ぎる。 『感情』というデータが出来たぐらいで邪魔物扱い…研究の支障にあたるからってあまりにも酷過ぎるぜ。 けどその実験は失敗し『Eins』に皆殺しにされたみたいだけど…中途半端な実験で『感情』というデータは半壊状態か。 なんとも惨たらしい事件だ。 あと気になるのはノーマル武装からオリジナル武装に変更した事。 市販予定の装備品を改造して『Eins』に装着したみたいだが、火に油を注ぐようなものだと思う。 ハナッから危ない『Eins』に強力な装備品を渡してどうするてっんだ。 それに死人も出ているにも関わらず…。 でもこの会社ならヤりかねないかもな。 人間の命なんて、なんとも思っちゃーいないだろう。 そして最後に『Eins』『Zwei』『Drei』『Vier』にも書かれていた西暦2031年5月1×日の『Eins』の暴走事件。 今回は『Eins』のデータだったため、『Eins』と『Zwei』が殺し合いをしてる画像があった。 姉妹同士で殺し合いかよ…。 しかも『Eins』が持っている武器は殺傷能力が高い物ばかりだ。 さらにあのアーマーだ…到底『Zwei』は勝てない。 そのおかげで『Zwei』は内部をボロボロにされたみたいだが、ここで少し疑問点が浮かびあがってくる。 『Eins』の装備している武器は確かに強い…けどあの武器だと外側にも強烈なダメージがでるはず。 なのに内部だけとはこれいかに? こればっかりは俺の想像はつかない。 一時保留だな。 …一番不思議なのは『少年』というのが気になる。 殺戮マシーン化してる『Eins』をどうやって止めたというのだ。 原因は書かれていないのでこれも解らない。 これも一時保留だな。 「アンジェラス…あいつはかなり酷いメにあってきたみたいだな」 この四つのデータの中で一番酷いかもしれない。 ルーナも可哀想な過去だったけどアンジェラスとは比べ物にならない。 とてもじゃないが、声をかける言葉が見つからない。 何も言ってやる事が出来ない…情けなさすぎるぜ…俺。 「あいつ等はこの過去を覚えているのか?」 もし覚えているなら教えるべきか? いや、寧ろ教えない方がいいかもしれない。 あまりにも酷過ぎる事しか書かれていないからな。 口にする俺も心が痛い。 「もう…閉じるか」 閲覧している『Eins』のデータを閉じようとマウスを動かした、とその時だった。 一番最後にリンクらしきものがあったのだ。 「『Schatten Eins』…なんだよ、これ?」 まだデータがあるというのか!? しかもこれは『Eins』のデータからのリンクでしかなさそうだ。 …気は進まないがこれも調べさせてもらうとしよう。 結局の所、俺の記憶に関する事は何も書かれていなかったのだから。 「…そういえば、アンジェラスと家で会った時…『初めまして…かな?』と言ったよ~な。まるで以前会ったかのような口ぶり…気のせいか」 フと、そんな事思い返しながらマウスを動かし『Schatten Eins』のデータに侵入しロック解除しようとする。 でも時間がかなり掛かりそうだ。 「やっぱり今度にしとくか。今日は辛い過去を見ちまったからな」 勝手に見といてなんだけど、辛いのは事実。 出来れば『Schatten Eins』のデータはこれ以上の酷い過去がありませんように、と願うだけ。 そして『Eins』と同じ名を持つ『Schatten Eins』とはどんなデータなんなのか。 これはあくまでも俺の勘だが…とてもイヤな予感がする。 「(c) 2006 Konami Digital Entertainment Co., Ltd.当コンテンツの再利用(再転載、再配布など)は禁止しています。」
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【武装神姫】セッション1-1【SW2.0】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm17995262
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第一幕。上幕。 中学校から家路を急ぐ少年と、彼の肩に、ちょこんと座った金髪の小さな少女。 彼の名前は新堂真人。名はマコトと読む。少女は天使型神姫「アーンヴァル」。名はフェスタ。 二人は顔は決して明るいわけではない。 マコトの横顔には暗い印象があり、フェスタの視線は定まらず、何処と無く虚ろでただ遠くを見ている。それに・・・。 かちゃん。 という音で脚を止める。見れば数歩前でフェスタが落ち、ひっくり返っていた。頭をさすりながらゆっくりと上体を起こしている。 マコトは手を差し伸べて彼女を拾い上げ、胸ポケットに入れようとする。と、両手でポケットの縁を掴んでそれにフェスタは抵抗した。 「肩しか、ヤだ。肩がいい」 「・・・解った」 そっと肩に手を持っていくと、せっせと手だけでよじ登り、フェスタは何とか元の位置に納まった。 彼女には。腿から先が無かった。 ダンスが好きな神姫だった。 家に初めて来た神姫。母が発売日にこっそり買ってきて、マコトに押し付ける形になったのだが。姉も、フェスタを可愛がってくれた。 良く笑い、リズムだけ歌いながら何時もクルクルと踊っていた。どちらかといえば寡黙な彼の肩や頭は即席のステージと化し、いつしか人が集まって来るようになった。フェスタ(祭)という名前も、そのダンス好きな一面から取った物。 バトルは決して得意ではなかったが、そこでもダンスの才能を垣間見せた。純正装備に加えてマコトが買ってきた、大型のライトサーベルでの近接戦が得意・・・いや、好きだった。マコトの適切な指示の元、彼女はジュニアランクの上位に食い込んでいった。 バトル・・・そう、戦場であるにも関わらず。そこでも彼女は舞っていた。 指先まで伸ばし、しなやかな肢体をくねらせ、翼を羽ばたかせて。その完璧な姿勢制御で駆け巡るフィールド。淡い粒子が舞い散る大剣は、ステージに姿を変えた戦場に美麗なる光の帯を引いた。流麗なるは光剣の天使。と噂され、彼女の舞いを見る為に遠征者が来る程であった。 「もっと色んな人に見て欲しいね」 そう言って、彼女は笑っていた。 自慢の神姫だった。 いつものように肩で踊っていた時。弘法も筆の誤りか。彼女はバランスを崩し、落下した。失敗失敗と起き上がろうと身体を起こし。 「フェスタッ!!」 絶叫に近い大好きなマコトの声を掻き消したのはエンジン音。 悲劇は、一瞬だった。 脚が潰れただけ。 メーカーからの補充パーツさえ来さえすれば、直ると思っていた。武装神姫は圧倒的人気を誇る商品だ。順番待ちなのは仕方が無い。 かかった期間は三週間。届いた純正の脚部を神姫ショップで装着。それで全てが解決するはずだった。 「・・・」 ぽかんと口を開けて、フェスタは呟いた。 「何も感じない・・・」 次の瞬間に堰を切ったように泣き叫ぶ彼女を何とか宥め、その日のうちに電車に乗ってメーカーに修理に行った。 何か色々なデータが取られ、様々な脚部が試された。武装神姫の物だけではなく、それ以前の神姫の物も。 その結果は残酷な物であった。 センサー類に異常は見つからず、原因は不明。恐らくは潰れたときのショックか、長く脚が無かった為に運動系制御機構にバグが発生しているのだろうとの事だった。 ・・・だが。 マコトはうっすらと別の理由を感じていた。 それは。非現実的だけれども。 その日から、フェスタは笑わなくなった。 手だけで肩に掴まっているフェスタが、ぼんやりとした目のまま思い出したように言った。 「マコト・・・」 また。はじまった。 「私を、捨ててもいいよ?」 あの日から。彼女は口癖のように言い始めた。 自分を捨ててと。邪魔だろうと。決して目をあわさずに。 「嫌だ」 「マコトはバトルが上手だし・・・頭も良いし」 黄色い髪が彼の歩幅に合わせて揺れる。 「歩けない神姫なんか連れてたら彼女も出来ないよ?」 自嘲が僅かに混ざる声。 「嫌だ」 いつもの返答を、たった一言の返答を繰り返す。数秒の空白。なおもフェスタが口を開く。 「だけど」 「フェスタがいい」 その言葉を聞くと、ふっとフェスタは黙り込んだ。 解っているんだ。喧々囂々と怒鳴りあった、はじめて捨ててくれと彼女が言い出した日。 知らず、口を吐いて出たその一言でフェスタは静かになった。 ・・・きっと、彼女は。この言葉が聞きたいのだ。聞かなくては不安で仕方ないのだと、マコトは解っていた。 いつしかマコトも、笑わなくなった。 何度か落ちそうになりながらも、フェスタを肩に乗せて自宅に到着する。無機質な様式の家。大量に作られた、特徴のない家。 家としても初めての神姫であるフェスタが来て、そんな家も一気に華やいだ。 ・・・あの日までは。 「?」 ふと見ると、家の車庫に見慣れない車が止まっていた。怪訝に思いはしながらも、彼は玄関の扉を開けた。 「おかえりなさいマコト」 聞きなれた声。今は僅かに無機質ささえも感じる。 「・・・お客さんが見えているわよ?」 トレイを持った母親が玄関にぼんやりと突っ立っている息子に声をかける。 「お客?」 我を取り戻し覗き込むと、応接間には身形の良い初老の女性が座っていた。 「・・・誰?」 「神姫研究所の方よ。その・・・フェスタちゃんの事で。話したい事があるんだって」 研究所というワードに眉を顰めながらも、彼は鞄を置いた。 「はじめまして。新堂真人さん。そしてフェスタさん」 初老の女性はその外見同様、固そうな性格を思わせる一応の笑みを浮かべながら言葉を切り出した。 「私、千葉峡国神姫研究所の所長を務めております。小幡紗枝と申します」 差し出された名刺を受け取り、はぁ・・・としか答えられないマコト。 フェスタは机の上に腿を前に投げ出す形でぼんやりと座っている。視線は小幡の方を向いてはいるが、その焦点が合っているかは甚だ怪しい。 「えっと・・・」 返答に困る彼に、小幡と名乗った彼女は金属製のケースを机の上に置いた。 「用件とは他でもありません。彼女・・・フェスタさんについてです」 ちらりと、机に座っているフェスタに視線を移す。 「フェスタにですか?」 「はい。失礼ながらお話は聞いています。残念な事故に遭われたと・・・」 光を照り返さぬ瞳のまま、フェスタが小幡を睨みあげた。 「そこで、こちらを持参しました。フェスタさんは初期ロット。系統が合うという事で」 ケースをゆっくりと開ける。と。 「脚・・・?」 そこには、白いメインカラーに草色のラインが走った神姫の脚が入っていた。 (こんな塗装見た事が無い) どことなくディティールがやぼったいというか・・・古臭い上、表面も武装神姫のようにツルツルしておらず、処理が悪い。 「あの、小幡さん。でもフェスタは・・・」 「だからこそ、この脚部を持参した次第です」 マコトははっと、思わず身を乗り出す。 「この脚なら、フェスタでも動かせるとか!?」 ぴくっと、フェスタが肩を揺らせた。 だが小幡はゆっくりと首を横に振った。 「それは解りません。この脚部はCRZRタイプの物。つまりは、旧式です」 「え?」 マコトの間の抜けた返答。すると、フェスタがポツポツと呟くように言った。 「CRZR・・・タイプ・クラリネット。製造年2031年から2034年。少数生産された会話や通訳を主目的とするタイプであり、発声能力や気候対応能力、外国語発音能力に非常に優れる・・・」 そこで彼女は口を噤んだ。 「その通りです」 「・・・で?」 虚ろな瞳のまま、フェスタは肩を竦めた。 「そのポンコツとも言える脚を、どうしようと言うのですか? 所長さん?」 「フェ、フェスタ!」 乱暴な言い方に慌てたマコトの声を無視して、彼女は淡々と続ける。 「確かに第一弾初期ロットにCRZRの脚部は合います。でも、そのクラリネットタイプの脚は既に試しました。まさかそれをまた?」 小幡は一つだけ頷き、同じ返答をした。 「その通りです」 馬鹿げてる・・・と小さく口の中で悪態を吐き、フェスタは歯を鳴らして再び口を噤んだ。 マコトもまた肩で溜息をついて、目を伏せた。 (きっと・・・フェスタはもう・・・) 試す事さえも、苦痛なのだろう。 幾度試しても、どれを試しても動かない脚。ほんの僅かな期待はその都度に踏みにじられ、その度に絶望のシャワーを浴びて、泣き叫び続けたのだから。 「あの小幡さん、ありがたいお話ですが・・・」 断ろうとしたマコト。だが、その床を見つめていた間にか、小幡は鞄の中から小型のコンピュータを取り出していた。 「失礼ですが。コンセントを貸していただけますか? 充電を忘れてしまって」 「あ・・・はい」 彼はとりあえず頷いてしまっていた。 「その脚部を持参したのは・・・」 手元で立体モニターを搭載したコンピュータにデータを打ち込みながら、小幡はゆっくり話し始めた。 「実は、私の意志ではありません」 「え?」 その意を介す事が出来ず、思わず聞き返すマコト。 「言うなれば『遺志』です。私の、神姫の」 「・・・遺志?」 神姫の遺志? 「フェスタさん」 小幡に頼まれる形でコンピュータの真正面に座らされ、相変わらず虚ろな視線をしているフェスタに声をかける。フェスタはフェスタで反応を示そうともしない。 「貴女は、自分を捨ててくれと。言っているようですが」 目線だけ動かし、彼女は小さく返した。 「それが何の・・・」 「未来を紡ぐ事を、止めようと言うのですか? 『今、ここにいる』のに」 少し強く言う。 紡ぐという単語に疑問符を浮かべ、フェスタは僅かに首をかしげた。 その仕草を見て小幡は悲しげな顔をし、やがて目線を逸らすと、データを再生させた。 「・・・どうか、御覧なさい。これはきっと、貴女へのメッセージです」 『はじめまして。妹であり娘である神姫よ』 モニターに。 腰まで届く草色の髪と、透き通るような銀の瞳を持った、美しい神姫が映し出された。 スペーサージョイントの部分から解るが、武装神姫ではない。もっと古いタイプの神姫。そのスーツカラーはパールと草色に彩られている。 『私はゼリス。プロトタイプ=クラリネット。私はこれより、全ての機構を停止して眠りに就きます』 その自己紹介で放たれた名前。そして続けられた言葉に、フェスタとマコトは息を飲んだ。 聞いてはいた。 去年のクリスマス、ゼリスという名の「死」を選ばされた神姫がいたという事は。それは神姫の意思ではなく・・・。 少なくとも。マスコミはそう伝えていた。 『想い出を守る為に、大切な人との日々を失わない為に。この素晴らしい時間を与えてくれた世界に感謝して』 「・・・想い出?」 ゼリスはモニターの中で。しかし彼女はフェスタのぽつりと漏らした言葉に、小さく頷いてから言葉を続けた。 『私が眠りに就いた後、私の身体をパーツとして、哀しみに囚われた神姫に与えてくださるようにマスターに頼みます。この映像を見ている貴女は、身体の一部を失って嘆き哀しんでいるのですか? それとも生まれながらに身体に不自由を持ち、それの為に涙を流しているのでしょうか?』 ぎくりとしてフェスタはゼリスの顔を見返した。これは録画された物のはず。しかし、その口元に浮かぶ静かな微笑は、確かに彼女自身に向けられている。 『・・・私の身体は、きっと貴女達には旧式でしょう・・・すみません』 少し目を伏せ、悲しげに言う。 そんなこと・・・と思わずフェスタは小さく漏らし、僅かに首を振った。数秒の間の後、再び優しい笑みを湛えてゼリスは語る。 『心が豊かであればあるほどに、貴女は知らず、新しい身体を拒むでしょう』 「!」 マコトとフェスタは共にはっとしてモニターを直視する。 「拒む・・・? 私が? ・・・?」 「フェスタ・・・?」 「う、うん・・・そんな事」 少し自信なさげに下を向いた彼女に、ゼリスは諭すように続けた。 『そう・・・貴女が失ったのは身体だけではなく。そこに込められた『心』そのものなのですから』 「・・・!?」 『非現実的と、非科学的と笑いますか?』 驚いたように顔を上げたフェスタに、くすっと笑う。 『けど・・・私は信じます。信じています』 目を閉じて、彼女は胸に両手をやった。 『・・・『ここ』に、作り物じゃない、心があるという事を』 そこにあるのはCSC。プログラミングによる人工の属性付与機構。 フェスタは知らず、自分の胸に手をやっていた。 ・・・それだけだろうか? ・・・それだけなんだろうか? 熱い、何かがゆっくりと。胸から込み上げてきた。 『受け取りなさい・・・私の身体を使う事で、娘の嘆きが止むのであれば。この『心』を与える事で、妹の涙を拭い、哀しみを癒す事が出来るのであるならば。何故、どこに迷う必要があるでしょう?』 「あなたは・・・」 マコトが思わず声を出すが、小幡が手で制する。 気付くとフェスタはじっとモニターを微動もせずに見つめていた。その空虚だった瞳には確かに光が宿り、涙で揺らいでいる。 『この身体には・・・何者にも代え難い、きっと・・・貴女達が築き歩いてきたと同じ程の『想い』が込められています』 ゆっくりと語りかけるゼリス。フェスタの口が、何か言葉を紡ごうとする。 「・・・っ」 ぱくぱくと。何かを必死で言おうと。何かを伝えようとする。 ・・・涙が、一筋、零れた。 『私の身体は想いで満ちています。私の想いを受け継ぎなさい。私の心と共に歩んでください。きっと、きっと貴女の閉ざされた心も開けると・・・信じています』 フェスタの涙を見て、ゼリスのその笑顔にも一本の涙が伝った。 それはきっと。自分への嘆きではない。 これを見ている、哀しみを抱いた娘へと送る涙。 『・・・笑顔のとき、そして涙のとき。空を見上げ、海を眺め、夢を描くとき・・・心が揺れ、そして『想い』が生まれ出るそのとき。いつでも私は、貴女と共にいます』 フェスタが身をゆっくりよじりながら、肩を揺らせた。目からは涙、唇は震え、首を僅かに左右させる。 『妹達、娘達よ。貴女達を愛しています。・・・これまでも、これからも』 優しさと、ほんの少しの哀しみを湛えた唇が、言葉を紡いでいく。 『そして・・・』 一度、口を噤む。 ゼリスは、優しい母の微笑みを浮かべ、両手を広げるように確かにフェスタに語りかけた。 『想いと共に。未来を、紡ぎなさい』 もう、抑えることは出来なかった。口をついて出る、その言葉を。 神姫。生まれながらのツクリモノの身体。だけど・・・。 「お母さん・・・」 涙でもう満足に前が見えない。フェスタはモニターに近づこうと指を伸ばし、そのまま前のめりにカチャンとその場に倒れ込んだ。 「う・・・うぁあ・・・っ」 手だけで這うように進み、モニターの中で尚も優しげな微笑みを浮かべるゼリスに・・・母に、彼女は腕を伸ばす。 ゼリスの柔らかな視線は・・・不思議と真っ直ぐにフェスタに向けられていた。そのまま、小さく頷いて娘を迎える。 フェスタはようやくモニターに辿り着き、母の姿に顔をすりつけ、泣きじゃくった。 コンピュータのキーボード部を椅子にして座ったフェスタ。背からはケーブルが数本、コンピュータの本体に向かって伸びている。 腿より先に取り付けられたのは・・・美しい草色のラインが走った脚。応接間にはマコト、小幡だけではなく。母、そして大学から帰ってきた姉も集まって、それを見届けようとしていた。 「セッティングは終了しました。さぁ・・・」 小幡が背中からジャックをゆっくりと抜く。小さな手が震えながら膝に据えられた。 ぐっと身体を前にして、力を込める。真綿の上から触っているような感覚しかない。 (でも・・・。違う) 武装神姫の高質合成樹脂でもない。旧式の神姫の脚。しかしそれだけじゃない。 確かに、確かにそこは暖かい。 「ううっ・・・!」 力を込め、ゆっくりと腰が浮いた。 「フェスタっ」 「大丈夫・・・!」 心配そうな声を出したマコトを制し、フェスタは目を閉じ、歯を食いしばった。 (もう一度) いつから諦めたのだろう。それを。あんなに大事だったのに。 (もう一度・・・踊りたい) もう一度。あの時のように。今も鮮明に思い出す自分の姿。喜んでくれたマコトの顔。 本当にいつから・・・夢を見る事さえ止めたのだろう。 「うあっ!」 キリキリと音を立てながら、ゆっくり膝関節が曲がっていく。 (マコトと・・・笑いたいよぉっ!) 彼女の偽りない想い。しかし、それに反して脚は動いてくれない。 (ダメ・・・!) 力が続かず、膝からガクっと崩れかける。 ・・・・・・。 小さな背を、誰かが押した。 確かに感じた、掌のぬくもり。 大丈夫、と。耳元で優しく囁く声。 草色の髪の匂いが、ゆるやかに舞った。 カタカタッと足音を残し、彼女は二歩、進んだ。長く忘れていた脚の感覚が全身に伝わる。じんわりと伝わる、立っているという確かな抵抗。そのまま更に、ゆっくりと二歩三歩と、信じられないといった顔で歩みを進めた。 カタ、カタ。足音は小気味良い音を立てながら、歩くという実感を与える。 彼女はゆっくりと、振り返った。 「・・・フェスタ!」 いつ以来かさえ忘れたマコトの笑顔が、そこに。 「マコトぉ・・・!」 笑顔が零れる。抱き上げられ頬擦りされながら。フェスタは確かに、近くに母を感じていた。 脚は。優しく、暖かかった。 ありもしないドレスの裾を指先で持ち上げるジェスチャー。 腰から礼をすると同時に左膝を曲げ、爪先でコツンとテーブルの天板を叩く。 姉が持ち出したオーディオから流れ出す音楽。 彼女は舞った。 柔軟性の高い武装神姫の高質樹脂の脚とは違う、旧式の、少し硬い合成樹脂の脚。 それは木のステージの上でステップを踏む度に乾いた音を響かせ、周囲の空気を奮わせる。翻す腕。伸びた指。くすんだ金髪が光をはらむ。音楽とステップが奏でるテンポは一つに解け合い、彼女の踊りにリズミカルな拍子を贈った。 やがて舞い終えると、彼女はドレスを直す仕草をしながら、仰々しく一礼をした。 拍手が彼女を包む。 小さな舞姫が顔を上げると、その瞳には涙が薄く湛えられていた。 ・・・。 いつか、貴女に会う時に。胸を張って娘だと言える様に。 未来を紡ぎます。お母さん。 第一幕。下幕。 第一間幕
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「さ~て、今週のねここの飼い方は~?~なの」 「何時流に乗っかったボケしてるのよ……」 「てへへ。一回やってみたかっただけなの♪」 「……まぁ、いいけどね。 それで今回ですが、コミックマーケット72で頒布される 『武装神姫ねここの飼い方02』の新着情報をお届けしたいと思います」 「ドンドンぱふぱふー、なの~♪」 「さて今回収録されているのは、『そのなな』、と『そのきゅう~そのじゅうよん』までになっています。そのはちがないのは前回のクライマックスに持ってきたため、ということに」 「劇場版は~?」 「うん、最初はそっちも入るはずだったのだけれど、ある事情で思ったよりページが増えてしまったので今回はカットすることにしたの。それはまた次回ね」 「えー、ねここそっちも楽しみにしてたのにー! ひどいよぅ、みさにゃぁん……」 「あはは、ごめんね。でもその代わり、前回の数倍の加筆修正をしているからそれで満足してほしいかな。エルゴトーナメント戦なんか7割は新作なんだよ。」 「あー、そうなのっ。エストちゃんとも戦ったしぃ、それにぃココちゃんもぉ~」 「それ以上はネタバレになるから言っちゃダメ」 「えー、ねここ言っちゃいたいのー! 「しょうがないわねぇ・・・じゃあ少しだけよ」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ さてさて、一回戦のお相手はどんな娘なのかな、と。 「フフフ……それは、私です!」 「にゃ?」 明朗快活な声が、反対側のコンソールから届けられてくる。 ねここと2人、そちらに目を向ければ、操作ボードの上に腕を組み、カッコつけているのか、 斜め45度の角度でこちらを見つめている神姫が1人。 頭部の特徴ある飾りからストラーフ型らしいその神姫は、足首まである豪奢な、黒衣のビロートのマントを身に纏い、 またその瞳は前髪に隠れていて、口元だけがニヤリと不敵な笑みを浮かべている。 しかも何故か彼女にはスポットライトが煌々と当たっていて、バックの赤に黒がよく映えるわね……って、えぇ? 「うぉっ、まぶしっ!?」 「何時の時代のネタをやっている、この馬鹿弟子がぁ!」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「……えー、たったこれだけなの……?」 「全部やっちゃ宣伝の意味がないでしょ。我慢するの」 「うぅ……はぁい、なの」 「いい子ね、後で杏仁豆腐作ってあげるから。それと今回、なんとあのGの人にゲスト原稿を頂きました!」 「おおー。すっごいのー♪」 「今まで謎にされていた、ねここと店長さんたちの裏の顔との出会い、その秘密が今大公開されるのです」 「面倒だからかかなかっただけとも言うの」 「う、言いにくいことをハッキリと言うわね……とにかくっ、結構な長編なのでご期待ください」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「はいはい。お客さん、今日はもう閉店なんですが…急ぎですか?」 「店長さん、雪乃ちゃんが!」 シャッターを上げたそこには見知った顔。ウチの常連さんである風見美砂ちゃんその人が その表情を曇らせて立っていた。肩の定位置にはねここちゃん。 そしてその手には……夕方店を後にしたゆきのんが眠っていた。 一目で解るくらい損傷している。 そして、その傷には見覚えがあった。 「辻斬り神姫……」 低く呟く。 「雪乃ちゃんの帰りが遅いから心配になって探したら……近くの公園で倒れてて」 「店長さん、お願いなの! 雪乃ちゃんを助けて欲しいの!」 「ああ、言われるまでもねぇ。任せろ!」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「あぅあぅ、ゆきにゃんが、どうなっちゃうのっ!?」 「それは本編をお楽しみ、ですよ」 「うぅ、商売上手なのぉ……」 「それでは、『武装神姫ねここの飼い方02』を、ご期待くださいっ」 「尚、現在『虎の穴』にて委託販売中となっています。 虎の穴通販ページ 「地方の方でも通販で確実に購入できますよっ」
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352 :名無しさん(ザコ):2013/02/21(木) 23 49 30 ID qHg4CfMM0 洋風・ゴスロリ装備神姫(武装神姫) ゴスロリ服に巨大武装を施した趣味的なコーディネートの神姫。 性能は多少ENが低いのが気になる程度で可もなく不可もない回避寄りグレー系だが、 攻撃面は射程1中心なものの燃費の良さと速攻火力に優れ、さらに無消費1300や 射程4弾数武装も揃うので優秀。 さらに目を引くのが威力3000のドラゴンクラッシャー。その圧倒的破壊力は見ものだが、 気力150にEN消費100/140でほとんどの武装がEN消費型と制限が厳しい。 なので、無理に狙うより良燃費のニョルニルハンマーかバトルアックスで戦う方が、 活躍はさせやすいだろう。 ……と、思いがちだが、実のところ凄まじい使い方が隠されている。 それは、このユニットは『装備を統一した素体』なので固有のパイロットが存在せず、 神姫パイロットを自由に乗せることができるという点だ。 つまり、威力3000の武装を持つユニットに、魂のサイフォス、痛撃奇襲のフブキ、 熱血闘志の紅緒を乗せることができる、ということになる。 サイフォスを乗せた場合、ヴァッシュのAAより下程度の威力になり、イベント想定や 夢コンボを除いた最大ダメージでは単独首位の破壊力になるのだ。 ただし、サイフォスは気合もあり一発を狙うのは容易だが、防御型なので他の面が多少辛く、 一発は残して他でも活躍させたいならフブキか紅緒を乗せてもいいだろう。 と書いたが、実はこの組み合わせもイベント想定に近い代物になっている。 原作からいえばイベント用とは言い難く、普通に乗せ換え可能な程度なのだが、 データ的にはパイロットと素体は一致しているのが基本形となっている。 仮に乗り換えも考慮するならコーディネート神姫は大幅に火力を落とすか、 ネームドから三倍SPを削除するのは必須だろう。
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第3部 「竜の嘶き」 「ドラゴン-1」 2030年代に登場した飛行能力を備えた航空MMS。 それらは多種多様なメーカーから出された数を含めれば数え切れないほどの多種多様性を誇ったが、一応の一定の安定した戦果をあげる活躍をし、:名機:とよばれるワクで絞っていくと、だいたい10機種くらいになる。 フロントライン社の天使型シリーズ「アーンヴァル」、戦闘機型「飛鳥」、スタジオ・ルーツ社製サンタ型「ツガル」、マジック・マーケット社セイレーン型「エウクランテ」コウモリ型「ウェスペリオー」、アキュート・ダイナミックス社製ワシ型「ラプティアス」ディオーネ・コーポレーション社製戦乙女型「アルトレーネ」 といったところが安定した強さを持っている。 もちろん、各神姫に対する評価は、オーナーにより、また神姫マニアの見方によっていろいろ違ってくる。 例えば旧式で性能的には最新鋭の武装神姫には劣っていても、局地迎撃用や戦闘可能時間の違いとか、火力、防御力、搭載能力、稼働率、整備製、コストパフォーマンスなどの点も考慮にいれなければならない。 このような観点から、総合的に採点してみると、天使型「アーンヴァル」、セイレーン型「エウクランテ」、戦闘機型「飛鳥」などが、武装神姫の中で空中戦ナンバー1を競うことになる。 アーンヴァルは、スピード、ダッシュ力、上昇力および安定性、生産製の高さで、他の航空MMSよりあまりある戦闘能力を保持している。 また「エウクランテ」は軽量で高機動、また支援ユニットに可変することで高速一撃離脱の戦闘方法で一世を風靡した。 「飛鳥」はずば抜けた運動性能で、登場した2030年代初期から中期にかけて、他の航空MMSを徹底的に痛めつけている。 いずれも武装神姫の可動初期からはたらき、改良されながら長期にわたって活躍したことが、他の航空MMSよりもポイントを稼いだ決め手になっている。 もちろんその他の「ツガル」「ウェスペリオー」「ラプティアス」「アルトレーネ」にしてもそれぞれ長所を大きくいかしての活躍が名神姫として数えられている要素になっている。 それらの中で、本来ならもっと高く評価されてもいいはずなのに、地味な存在なのがカタリナ社製の「ドラッケン」シリーズである。 「ドラッケン」は航空MMSの中でも「アーンヴァル」とほぼ同等の古い航空MMSである。上記3機が軽装甲、機動性と格闘戦闘を重視したのに、対してドラッケンは頑丈さと火力、防御力で相手の小技を跳ね返す真逆の発想で設計された。 強固な装甲と重火力、それなりの機動性を持つこのドラッケンシリーズは万能戦闘機として結果的に成功をおさめ、その合理性を立証した。 2041年10月16日 天王寺公園神姫センター 第3フィールド森林ステージ ズンズズン・・・ドン・・・ドドン・・・ 天王寺公園の一角、森の中の小川を挟んで、大砲を背負った神姫が激しい撃ち合いを行なっている。 少しはなれた小高い丘で、フィールド参加神姫の待機所で複数の重武装の神姫たちがトレーラに乗って砲声を聞きながらのんびりと出番を待っている。 チーム名「ドラケン戦闘爆撃隊」 □戦闘爆撃機型MMS「シャル」 Sクラス □戦闘爆撃機型MMS「ライラ」 Aクラス □戦闘爆撃機型MMS「セシル」 Aクラス オーナー名「伊藤 和正」♂ 27歳 職業 工場設備関係メーカー営業員 とくに話すこともない知れた顔ぶれ、彼女たちは同じ伊藤の所有する神姫たちだ。 伊藤はのんびりと新聞を読んで戦闘中のフィールドからの応援要請を待っている。 シャルは自慢の武装の2mm機関砲を布で綺麗に拭いて手入れをしている。 ライラはぼけーと口を半開きにしてどんよりとした曇った秋空を眺めている。 セシルは地面を這うアリを観察している。 ラジオもネットもなく、お互いがそれぞれ別のことをしながらただ、ゆっくりと時間が過ぎるのを待つ・・・・ ダガガガガッガガン!!!ガッガガガガン!! ふいにカン高い機械音が鳴り響き、ボンボンと黒煙が戦場になびき、樹脂の焼ける独特のにおいが流れてくる。 ポーンと情けないメールの着信音が待機所に設置されているメールボックスに届く。 伊藤がカチカチとノートパソコンのメールボックスを見て待機しているシャルたちに話す。 伊藤「出撃だぞ、手前の赤チームから救援要請だ。敵の神姫にアイゼンイーグルを装備した重火力の武装神姫が出たらしい」 シャル「了解、ドラケン戦闘爆撃隊、出撃します」 ライラがエンジンのスタートキーを回す。 ドルン、ドルンンドルルン・・ルンルン・・・グオオオオオオンン まるで獣の吼え声のように強力なエンジンが唸り、心地よい振動を生み出す。 セシル「敵機は?今日は上がってくるのでしょうか?」 セシルはぼつりとつぶやく。 シャル「俺たちに救援要請を出したってことは向こうも迎撃機を出すってことだ、足の速いアーンヴァルか、もしくは格闘戦に優れた戦乙女か・・・」 ライラ「こちらドラケン2、出撃準備完了」 セシル「ドラケン3、いつでもいけます」 シャルがうなずく。 シャル「マスター、ドラケン戦闘爆撃隊、出撃準備完了、今日の武装は、2mm機関砲、多連装ロケット砲、マイクロミサイルを搭載しています」 伊藤「よし、目標は地上で戦っている陸戦MMSの支援爆撃だ。迎撃機が出るかもしれない、十二分に注意しろ」 シャル「了解しました」 ライラ「はっ」 セシル「YES、SURE」 ドドドドドン!!ズドドドドドッ!! 強力なアイゼンイーグルガトリングキャノンを構えた悪魔型神姫が前線を押し上げている、横には数体の夢魔型が護衛として付き添っている。 くぼんだ塹壕に、火器型のゼルノグラードとヤマネコ型が身動きがとれずに必死に応戦していた。 ヤマネコ型「畜生、応援のドラッケン部隊はどーした!」 火器型「まだです!まだ来ません!!」 片腕を失った騎士型が荒い息を吐きながら舌打ちをする。 騎士型「あの重機を仕留めないことには、5分も持たないぞ!!!」 剣士型「おい!!あれを見ろ!」 キラキラと黒光するネービーブルーの機体を輝かせながら、上空から多連装ロケットランチャーで爆装したドラッケン戦闘爆撃機型MMSが3機、急降下で舞い降りる。 シャル「いいか!味方の塹壕まで2メートルと離れていない、慎重に爆撃しろ!」 ライラ・セシル「了解」 バシュバシュバシュバシュッ!!! 白い噴煙を吐きながらシャルたちは一斉に悪魔型たちに向かってロケット弾を全て打ち込んだ。 夢魔型「ド、ドラッケン戦闘爆撃機!!」 悪魔型「迎撃ッ!!」 悪魔型が強化アームでがっしりと構えたアイゼンイーグルを向けて、攻撃しようとするが、ガトリングは砲身が回転するまでのわずかな空転時間を要する。 それが致命的なタイムロスとなり、悪魔型の命運を分けた。 ドドドンッ!!!ズッドオオム!! 数十発のロケット弾が悪魔型と夢魔型数体を巻き込んで大爆発が起きる。 □悪魔型MMS 「ノーザス」 Aクラス 撃破 □夢魔型MMS 「リセム」 Bクラス 撃破 □夢魔型MMS 「パッセル」Bクラス 撃破 シャル「命中命中!」 ライラ「ドンピシャリ!」 セシル「全弾命中!」 下をちらりと見ると味方の神姫たちがしきりに手を振ったり被っているヘルメットや兜を振って声援を上げている。 火器型「助かったぜ!おまえんとこのマスターによろしくな!」 ヤマネコ型「さすがはドラケン隊だ!頼りになるぜ!」 騎士型「次もよろしく頼むぜ!!」 ぐるりと味方の神姫たちの上空で機体を振りながらバンクするとシャルたちは帰り道に急ぐ。 行きはどんよりとした曇り空が今は、風が出てきたのか晴れてきて見通しがよくなってくる。 シャル「・・・まずいな、晴れたきたぞ」 シャルは嫌な悪寒がし、キョロキョロと辺りを警戒する。 チカチカと上空から黄色い閃光が瞬く。 ドガドガドガン!! 右翼を飛んでいたライラの機体を黄色い閃光が貫いたと思った瞬間、ライラの体がバラバラに空中分解して爆散する。 □戦闘爆撃機型MMS「ライラ」 Aクラス 撃破 セシル「ライラッ!!」 ウオオオオオオオオオオオオオンン!!! シャルたちの上空から4機のアーンヴァルMK-2テンペスタが雲の切れ目から急降下で襲いかかって来た。 シャル「畜生!!待ち伏せされていた!!」 バスンバスン・・・ 全身穴だらけのボロボロの体でシャルは伊藤の待つ待機所まで、黒煙を吹きながらたどりつく。 伊藤がバッと新聞を投げ出し叫ぶ。 伊藤「なんてこった、行きは3機で帰りは1機か!」 ガッシャーーン!! 地面に胴体着陸してバラバラになるシャルの武装。 シャル「クソッタレ!」 シャルはむくりと立ち上がると砂埃を払う。 伊藤「大丈夫か?シャル!!他の連中は?」 シャル「セシルは手誰のアーンヴァルに追い詰められて自爆した。ライラは粉々にされちまった」 伊藤「なにがあった?」 シャル「たぶん、アーンヴァルの改良型だ。いきなり雲の中から飛び出してきた」 伊藤「しかし、それにしてもよく無事に戻ってきたな」 シャル「こいつの重装甲のおかげだ。もっともこの重装甲のおかげで逃げ切れなかったという点もあるがな・・・」 伊藤はぽりぽりと頭を掻く。 伊藤「しかし、待ち伏せとはな・・・」 シャルは遠い目をして答える。 シャル「俺たちを襲った連中は知ってやがるんだ。鈍重な俺たちが爆撃にくるってことをな」 天王寺公園の一角にあるこの神姫センターは立地条件に恵めれた大型神姫センター店である。 市営地下鉄、私鉄、電気軌道の路面電車、路線バス、高速バスが集中するターミナルとなっており、周辺はキタ・ミナミに次ぐ規模の繁華街を形成している。ミナミの難波とは大阪市街の南玄関としての機能を二分する。 大型商業施設には、百貨店、地下街も充実しており観光地としての表情も併せ持っており、老若男女を問わず賑わいを見せている。 そのため、老若男女を問わず、近隣の郊外から暇をもてあました強力なオーナーが集中し関西でも指折の激戦地区となっていた。 シャルが他の神姫たちと軽い雑談をする。 ぎらついた目つきの悪い黒い天使型のエーベルと、胡散臭いステルス戦闘機型のフェリアだ。 □ 黒天使型MMS「エーベル」 Sクラス オーナー名「斉藤 由梨」 ♀ 22歳 職業 商社OL □ステルス戦闘機型MMS 「フェリア」 Sクラス オーナー名「今宮 遥」 ♀ 23歳 職業 商社営業員 エーベル「そうかーライラもセシルも落とされたのか」 フェリア「運が悪かったんだろ、よくあることだ・・・気にするな」 シャルはこめかみを押さえて顔を歪めて話す。 シャル「2人はバラバラにやられちまってオーバーホールだ。直るのに1週間はかかるよ」 ファリア「テンペスタの小隊か、厄介だな・・・この辺りにはあんまり見かけなかったんだが・・・」 シャル「テンペスタにこっちの武装で勝っているのは装甲と火力だけだ。よほど有利な条件でなければ空中での格闘戦では勝てない」 シャルはエーベルやフェリアにも警告する。 シャル「お前たちも注意しろよ」 エーベル「・・・」 フェリア「・・・」 シャル「まあ、注意したってやられるときはやられるんだがな・・・」 夜になり、あたりは鈴虫やコオロギの秋の虫たちの音色で溢れる。 騒がしいまでの虫の音色がピッタと止まる。 ズズンドンドドドン・・・ズンズズン・・・ 低い砲声が唸り、爆発音が響く、そして機関銃のカン高い音と照明弾が夜空を照らす。 数機のコウモリ型が夜襲を仕掛け、フィールドで砲台型が迎撃の対空攻撃を仕掛けている。 天使型のエーベルが塹壕からひょこりと顔を出す。 エーベル「やれやれ、今日も懲りずにきやがったな、コウモリの連中」 エーベルはギュムと柔らかい何かを踏みつける。 シャル「いてェ、足を踏むなよエーベル」 エーベル「おおっとシャルか?」 シャルがヒラヒラと手を振る。 シャル「今日はコウモリ型の連中しつこいな」 エーベル「フェリアの奴が露払いにさっき出撃したぜ?」 シャルはちらりとエーベルを見る。 シャル「オマエは行かなくていいのか?」 エーベルは肩をすくめる。 エーベル「連中、逃げ足が速いからな、ちょっとでも不利になるとすぐ逃げ出す」 はあーーーとシャルは重いため息を吐く。 シャル「待ち伏せが来るってことは分かっていたはずなんだけどな・・・それをしっかりとライラたちに警告できなかったのは俺のミスだ」 エーベル「シャルを狙ったテンペスタは機関銃が故障していたんでしょう。でなきゃシャルもやられていた。シャルだって危なかったんだ、戦いなんてものはどうしようもないときのほうが多いんだ。イチイチ気にしてたら気が持たないぜ」 シャルは顎に手を付いて考え事をする。 シャル「・・・・・・」 エーベルが顔を上げる。 いつの間にか辺りは静さを取り戻し、虫の音色が再び聞こえてくる。 エーベル「コウモリ型もどこかにいっちまったようだ」 シャルがきょろきょろと警戒する。 シャル「今日は戦艦型の艦砲射撃は無さそうだな」 エーベル「明日も速いし今日は早めに寝るよ」 秋の夜は、少し肌寒い・・・・ To be continued・・・・・・・・ 次に進む>「ドラゴン-2」 トップページに戻る
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SHINKI/NEAR TO YOU 良い子のポニーお子様劇場・その4 『セントウノヒ』(前編) >>>>> そこはまるで廃墟のようだった。 乾いた土がむき出しになった街道の両脇を、木造りの古びた家々が並んでいる。アメリカ西部開拓時代をテーマにした映画にでも登場しそうな古ぼけた宿場町。 打ち捨てられまさにゴーストタウンと化した街並みの間を、これまた映画のワンシーンよろしくダンブルウィード(西部劇によく出てくる、あのコロコロ転がるヤツだ)が風に吹かれ勢いよく転がっていった。 突如街に轟音が響く。 それと同時に、銃弾の雨に降られ穴だらけとなった廃屋から白い影が飛び出した。 蒼いポニーテールをなびかせ、白い装甲を身にまとった少女――武装神姫のゼリスだ。 「ゼリスッ、大丈夫かっ!?」 銃弾に吹き飛ぶ廃屋の木片をかいくぐり辛くも窮地から脱出する相棒を案じて、シュンは思わず叫ぶ。 「問題ありません。この程度の銃弾ならそよ風のようなものです」 軽口を返す相棒に安堵を抱きつつ、シュンは倒壊する建物の向うに立つ対戦相手の神姫を睨んだ。 砲台型MMSフォートブラッグタイプ。砲台の名が記す通り、火力に優れ射撃戦に特化したスペックを持つ武装神姫だ。 フォートブラッグタイプは手にしたガトリング砲アイゼンイーゲルを構え直し、廃屋の合間を駆けるゼリスに向け再び銃弾の嵐を見舞う。 「そらそらそらぁっ! 逃げてばかりじゃ勝てないよ?」 フォートブラッグは挑発的な笑みを浮かべながら、ガトリング砲を掃射する。口惜しいが相手の言うとおり、こちらは戦闘開始から防戦一方だ。まず火力が違いすぎる。 「シュン、焦ってはいけません。冷静さを欠いてしまっては打開できるものもできなくなります」 一旦距離をとり物陰に身を隠したゼリスが、手にした自動拳銃のマガジンを確かめながらシュンをたしなめる。 「分かってるよ!」 ゼリスに諭されて、シュンは大きく深呼吸した。相手は立て続けの攻勢に気を良くしたのか、すぐに追ってこない。侮られているのかもしれないが、仕切り直すには都合がいい。 状況を整理する。 相手とこちらの武装の差。このフィールドの特性。――何か利用できるものはないか? しばし逡巡したあと、シュンはゼリスに指示を出す。コクリと頷いたゼリスは、それまで隠れていた廃屋の影からタウンの中央を走る街路へと身を躍らせた。 隠れる先を注意深く探っていたフォートブラッグは、訝しげに突如大胆に姿を現した獲物に銃口を向ける。 「どうしたの? こそこそ隠れるのは諦めたのかしら?」 「さあ、どうでしょう?」 両者は街路の真ん中に立ち、しばし睨みあう。互いに攻撃に移るための機をうかがう様は、まさに西部劇のワンシーン。 次の瞬間、ゼリスは大きく横に飛びながら自動拳銃を抜ぬく。と、同時にフォートブラッグのガトリング砲が吠える。 降り注ぐ銃弾が大地を舐める。砂埃が舞い上がる中、ふたつの影が疾駆する。 街路を、宙を、廃墟の壁を、縦横に駆けながらゼリスは相手に向かって構えると同時の即準速射。発砲と共に大きく跳躍し、離脱。それを追いかけるようにフォートブラッグの掃射が、街路の土を抉り廃墟の壁を吹き飛ばす。 「あははははっ、カクレンボの次は鬼ごっこ!?」 ジグザグに街を駆けながら、ゼリスは暴風のようなガトリング砲の火力に押され後退を余儀なくされる。それを追いかけながら、更なる火力でもって押し潰そうとするフォートブラッグ。 「!?」 火線がやむ。巻き起こる埃が風に流された場所は、ゴーストタウンの中心に位置する広場だった。視界の開けた土地は街を東西に貫くT字路の交差点となっている。広場の北側は教会を模しているのだろうか。屋根に大きな十字架を抱いた他よりも一回り大きな建物が鎮座していた。 さて、標的が逃げたのは三叉路のいずれか? フォートドラッグは三方に視界を巡らせながら、教会を背にガトリング砲を構え直す。 「往生際が悪いわよ。さっさと出てきなさ――」 ふっ――と。急に視界が陰る。きょとんとしたフォートブラッグは何事かと空を仰いだ。 「――――っ!?」 天から十字の影が降ってきた。教会の上に祭られていた十字架だと認識するころには、それは無防備に仰ぎ見るフォートブラッグを直撃していた。 ――――ごつんっ! ふぎゃっ! と十字架に押し潰されたフォートブラッグの傍らに、教会の屋上からゼリスが繰る繰ると宙返りしながら舞い降りる。 ゼリスに突きつけられた銃口に、十字架の下でジタバタともがいていたフォートブラッグはタラリと汗を流しながら「サプレンダー(参った)」を宣言したのだった。 「三叉路に逃げ込んだと見せかけて、死角になる頭上から強襲! なかなかいい作戦だっただろ?」 シュンは下りエスカレータをウキウキと降りながら、パートナーに同意を求める。 彼の頭の上にちょこんと座りこんでいるゼリスは、「ふむ」と小首を傾げた。 「敵の火力に主導権を握られてしまったことを逆手にとって、追いつめられるふりをしながら相手を誘導し地の利を生かして隙をつく――発想そのものは悪くありませんが、リスクの高い戦術でした」 「……うっ」 「あのフォートブラッグの射撃はただの乱射のようで、こちらの動きを絶えず的確に捕捉していましたからね。運が悪ければ誘導する途中で被弾し、そのまま押し切られていたかもしれません。今回はうまくいきましたが、毎回このような策が成功することはないでしょう」 ……手厳しい評価だ。身内だからって容赦なさすぎじゃありませんか、ゼリスさん? とは思うものの、バトルの興奮から頭を冷やして振り返ってみればその指摘はいちいちもっともだ。 ゼリスと出会ってからすでに2ヵ月。神姫センターのバトルや指示にも随分慣れてきたと思うが、優秀なパートナーに追いつくにはまだまだらしい。 ウキウキステップから肩を落としたションボリ歩きに変わったシュンを、すかさずゼリスがデコピンで叱咤する。 「しっかりして下さい。過程はどうあれ勝ったものが俯いているべきではありません。敗者に対し敬意をもって応えるためにも、勝者は胸を張るべきです」 額を押さえるシュンの瞳に、自分を覗き込むエメラルドの瞳が映った。 「それに今回の作戦――こう着状態をくつがえすという点では悪くありませんでした。相手の火力に攻めあぐねていたのは事実ですし……あの場でとっさに考えたにしては、ベストとは言えませんが及第点といったところでしょうね」 あくまで淡々と、ゼリスは語る。 「……ひょっとして、誉めてくれてるのか?」 「……? 私はただ良い点は良い、悪い点は悪いと率直な感想を述べているだけですよ」 そう言い終えるとゼリスは再び彼女的定位置であるシュンの頭の頂上へと戻る。元よりゼリスは機の利いた世辞や慰めをするようなヤツじゃない。シュンのパートナーである武装神姫は――呆れるぐらい正直で真っすぐなヤツなのだ。 シュンはエスカレータの最後の段を勢いよく蹴ると、胸を張って神姫センターを後にした。 今日の失敗は今日の失敗。省みて明日の糧にすればいい。歩みは遅くとも、一歩ずつ確実に前に進んでいけばいいのだ。 * 「……これは失策でしたね」 「……面目ない」 嘆息するゼリスを肩に、シュンは恨めしそうに道路を見つめた。 雨だった。 それも大雨だ。 神姫センターを出るあたりから、空模様が怪しくなり出し――そこからポツポツ降り始めた滴が大粒の雨となるのはあっという間だった。 「駅に着く前にこんなに強くなるとなあ……」 急遽逃げ込んだ店先の軒下でシュンがしみじみ呟けば、ゼリスが「私は忠告しましたよ」と不満げに返す。 確かに神姫センターを出るときに、ゼリスから今日は一部で夕立の予報があったこと、雨具の用意がないことなどを指摘されて「しばし様子をみてはどうでしょう」とか言われてたけどさ。だからってこんなにいきなり土砂降りになるとは思わないだろう? 「その結果が駅にも辿り着けず立ち往生では、しかたありません」 …………おっしゃる通りです。 さて、どうしよう。もうすぐ6月も終わりだってのにずぶ濡れで帰るのも嫌だしなあ。ともかく駅まで行けば、あとは妹のユウにでもPDA(ケータイ)で連絡を取って傘を持ってきてもらえばいいんだけれど。それともこれだけ雨の降りが強ければ、少し待てば止みそうにも思えるし―― 軒下にポツンと立ちつくしながら、あれこれ思案していると視界の端を黒い影がよぎった。どうやらシュンと同じように傘を忘れた人間が雨宿りに駆けこんできたらしい。 厳つい体に裾の長い学生服――いわゆる長ランをまとった大男だ。 ん? 厳つい長ランの大男? 最近、そんな人物にどこかで会ったような…… 「うーむ。急に降ってくるとは困ったのう」 「イエス・サー。この状況ではしばらく静観するしかないであります」 忌々しげに空を見つめる長ラン男に、そのポケットから顔を出した神姫が応じる。 「ああっ!?」 「何っ?」 「むうっ?」 思わず奇声を発して驚いたシュンに、向うのふたりもこちらに気付く。 「これはこれは……奇妙な縁ですね」 ただ一人平然としているゼリスが、呑気に呟いた。しかし他の三人はあっけに取られてまだ固まったままだ。 番長治(バン・チョウジ)とその武装神姫ベガ――シュンとゼリスが初めて神姫センターで戦った相手だ。ひょんなことからベガと武装神姫バトルをすることになったゼリスは、危ういながらも初勝利を上げることができたのだが……その相手とまさかこんなところで再開するとは思いもしなかった。 ……気まずい、どうしよう。 出会いが出会いだけに気軽に世間話をするような相手でもないし(そもそも番長治とベガのふたりとは一度バトルしただけ。よく知った相手でもない)、かといって雨の降りは強いままで立ち去ることもできない。しばらくは狭い軒下で肩を並べるしかない。 「…………」 「…………」 向うも同じなのか、番長治は低く唸ったきり黙りこんでいる。最初に会ったときのようにケンカを吹っかけてくることは無いようでホッとするものの、居心地の悪さは変わらない。 ベガもこちらを睨みはするものの、マスター同様黙ったままだ。 「お久しぶりですね、そちらは……むぎゅっ」 三者沈黙。そのなかでごく自然に話しかけようとするゼリスの口を、シュンはとっさにふさぐ。 (お前、少しは空気読めよ!) (失敬な、私はごく普通に挨拶をしようとしただけではありませんか。弾圧です、言論統制です。自由は死なせずですよ) 自由の前に僕がこの場の空気に耐えられなくて死んじゃうよ! ゼリスのマイペースぶりに辟易しつつ、隣をうかがう。 番長治が何かをしゃべろうと口を開いた、その時――横なぐりの水飛沫にいきなり視界を遮られた。 「あっ!?」 そう叫んだのは誰の声だったか。通り過ぎる自動車のエンジン音に、シュンは一瞬遅れて何が起ったのか理解した。排水溝が詰まっているのか、もともと路盤の施工が悪いのか。道路沿いに大きく溜まった雨水を自動車のタイヤが盛大に跳ね上げたのだ。 気がつけばシュンもゼリスも、さらに番長治とベガまでびしょ濡れになっていた。 「くっくっく……」 ベガが低く笑う。 「サーと私に泥水を被せるとは……民間人と言えど、ただではすまさんぞ! 軍法会議にかけてやる!」 いや、軍法会議ってどこの? 激昂するベガに、ゼリスが静かに応じる。 「車種及びボディーカラー、ナンバープレートとも全て把握しました。目標の追跡は可能です」 ゼリスの目がキラリと光る。 「でかしたぞ、小娘! まずはこちらでヤツを確保し、軍隊のルールを骨の髄まで叩きこんでくれる!」 「ええ。その際は不埒者に猛省を促すため、私自らの手でデコピン百回の刑に処して差し上げましょう」 妖しいアイコンタクトを交えて、ゼリスとベガが不敵に笑う。 「……って、待て待て待てっ! お前ら何するつもりだっ」 「何をと申されましても。シュン、泥はね運転は立派な道路交通法違反であり、処罰の対象ですよ。罪を犯した者が然るべき罰則を受けるのは当然ではありませんか?」 そうなんだ、知らなかったな。見れば番長治とベガも「なるほど」といった顔をしている。いや、じゃあベガはさっきまで知らないで過激なこと言ってたのか。 「ただし……道路交通法違反は現行犯での処罰が原則ですから、この場合状況証拠だけでは犯人は無罪放免ともなりかねません。ここはやはり……」 「我々の手で私刑にするということだな!」 互いにマスターの懐から飛び出したゼリスとベガがガッチーンッと腕を組み合った。おいこら、変な形で意気投合するな! 「ふむ……シュンはこのまま泣き寝入りをしてもよいのですか?」 「敵を前にして逃亡するなど、軍の恥さらしだぞ小僧!」 だって僕は軍人じゃないし……。あ~、もう! ふたりして迫るな。番長治も何か言ってくれよ。 「しかしのう、ベガよ。今から追いかけても車には追い付かりゃせんぞ。この雨もあるしのう」 意外に冷静なその言葉に、一同は空を見上げた。 空を覆う曇天には切れ目も見えず、雨脚は弱まる気配がない。シンと静まると同時に、それまで忘れていた寒気を急に思いだした。 ――ハックションッ 盛大なくしゃみと共にシュンは体をブルッと震わせた。ゼリスが心配そうな顔で覗き込んでくる。 そういえばずぶ濡れなんだった。これは不味いな。ベガや番長治たちとコントしてる場合じゃない。このままだと風邪を引くのは確実だ。 ふと。同じくずぶ濡れの番長治が「フンッ」と大きく鼻を鳴らすと、くるりとシュンに向き直った。 「お前、ちっくとワシにつき合わんか?」 思わず身構えたシュンは、耳にした意外な言葉にぽかんとした。 『セントウノヒ』(前編)良い子のポニーお子様劇場・その4//fin 戻る
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そのろく「類は共を呼び友になるのか?」 きりきりきりきり ひゅっ ずとん 「的中」 現在部活動の真っ最中。 人間何事も平常心が大切だよね、って取って付けた事を言うつもりも無いけど、雑念邪念を振り払いたい僕にとって、この部活を選んで良かったと言わざるを得ない。 昨晩のアレは、なんて言うかダメすぎる。 おかげで今朝は、なんとなくティキを正視出来なかった。 そういう意味でも弓道っていいよね。精神修行だし、集中しないと動作に現れる。 つまりへまをやらかしたくなければ余計な事は考えないようにしないといけない。 ひとしきり矢を番えた僕は、更に精神を落ち着かせる為道場の隅で正座し、反目閉じる。 ウチの学校の弓道部は大会等で好成績を残す事を目的としていない。なら何が目的なのかと言えば、「修練」なのだそうだ。 だから勝つ為の技法より、心構えや求道性を求められる。そんな指導で強い選手など早々育ちはしない。 つまり、そんな空気感のある部活と言う事。 だから僕が隅で心を落ち着かせる為に正座をしようが、誰にもとがめられる事は無い。 顧問に言わせればむしろ奨励。 実際にどんな邪念妄想を打ち消そうとしているかなんて、誰にもわかるはず無いのだから、僕はこの時間を有効活用し、必死に平常心を取り戻そうとしていた。 すうっ、と僕の隣に誰かが座る気配を感じる。 一人が座して、他の部員がそれに倣う事も多々あることなので、僕は気にしないで雑念と闘っていた。 の だ が、 「武装神姫」 耳元ではっきりとそう聞こえた。 雑念を読み取られるわけ無いんだけど、僕はそれでもギョッとして今となりに座した人を確認する。 同じ一年の式部敦詞(しきぶ・あつし)がそこにいた。 式部は目を閉じたまま、小声で続けた。 「明日の放課後、神姫を連れて三丁目の公園に来い」 「……わかった」 僕は、やはり小声で答えるしかない。僕は学校ではそういう興味がまったく無い人間として過ごしているので、事を大きく出来ない。たとえそれが脅迫だとしても、だ。 結局僕は、新たな雑念を抱えて家路に就くことになった。 次の日 部活が無い日をわざわざ選ぶのは、やはり同じ部に所属するからで、部活がある日だと時間的に都合が悪い。そういう意味じゃ常識的な相手。 つまり、あまりにも非常識な要求はしてこないだろう、と僕は予測する。 正確に時間を決めていたわけじゃないので特に急ぐ事も無く、僕は公園に到着した。 「遅い!」 来るなりヤツはそう言う。 「別に時間決めてたワケじゃないだろう?」 僕は答える。チョット言葉が強張るのは緊張してるから。 「それがお前の神姫か?」 「そ……そうだ」 式部は僕の頭の上にいるティキを見る。今日のティキは母さんが作った服を着ていた。 そんなティキを確認し、式部はチョットだけ目付きをきつくした。 頭の上でティキがビクッと震えるのを感じる。 「なんで武装して無いんだよ」 「……はぁ?」 「それじゃあバトル出来ねーじゃんかー!」 式部はそう言うと、大げさに天を仰ぐ。 「……話が読めないんだけど?」 そう言った後で、僕は式部のすぐ近くで宙に浮いている、小さな人影を確認した。 白い素体に真っ赤なアーマー。 「おい、それって……」 僕は思わず指差す。 果たしてそこにいたのはMMS TYPE SANTA CLAUS ツガル。 その姿に頭上のティキも気付いたんだろう。僕の頭の上でジタバタと暴れだす。 「マスタ! マスタ! 見た事無い娘がいるですよぉ☆ すごいですよぉ♪」 「まだ発売して無いウエポンセットの!!」 「はい。はじめまして。きらりです。よろしくお願いします」 未だ天を仰いで悶絶している自らのオーナーを尻目に、きらりと名乗った神姫が丁寧にお辞儀した。 公園にいたままじゃ埒が明かないという結論に至って、僕らは連れ立って近所のアミューズメント・センターに場所を移した。 ここは所謂昔で言うところのゲーセン。それにファーストフード店とそして武装神姫のアクセスセンターとを兼ね備えている施設だ。 「つまりBAのコニ○・パレスみたいなところなのですよぉ♪」 「……誰に対して言ってるかわからない上に、僕には言ってる意味もわからん」 遠慮がちにティキにつっこむ。 場所柄だろうか、周りには神姫を連れた人たちで賑わっている。ここではセカンドリーグまで扱っているらしいので、そういう意味じゃリーグ参加者が多いのも当然か。 僕らの様な地方(と言っても首都圏)に住んでいる人間にとって、こういう施設は需要が高い。 僕らは適当に空いている席を陣取ると、軽食を取りながら改めて話を始めた。 あー……でも、たいした話でも無いので内容だけ。 要するに、式部は僕とティキが初めてバトルしたあの試合を偶然にも目撃していたらしい。それでオーナーの顔を覗いて見たら、何と見知った顔じゃないか。神姫ユーザーである事を(僕とほぼ同じ理由で)隠していた式部は、何としても発見した同士を逃がすわけには行かない。 「と思って、つい声をかけちまったんだよ」 式部はそう言ってジュースのストローに口をつける。 「それにしたって、もっとやり方ってあるだろう? っと、ティキ、ウロチョロしない」 答えながらもティキをあやす。ティキとしては珍しいんだろうな。もっと色々と外に連れ出さないと。反省。 そういう意味じゃ、きらりは落ち着いたもので、大人しく座って式部と一緒にポテトをかじっている。 「あんな言い方じゃ、どう好意的にとっても友好的には受け取れないよ」 僕は大好きなマウ○テン・デューに手をつける。 「あー…… それについては反省してる。よっぽど切羽詰ってたんだな、俺」 「一人で納得するなよ」 「ははは。まぁ良いだろ? で、それじゃ、改めて。今度部活が無い日に、俺のきらりとお前のティキでバトルしようぜ」 そう言って右手を僕に差し出す。これは握手しようってことかな? 「わかった。明々後日だね。……最初からそう言ってくれれば良かったんだよ」 僕は式部と握手を交わす。こういうのって慣れて無いからチョット照れる。 「へへへ、こういうの、チョット照れるな」 まるで僕の心の中に浮かんだ言葉をそのまま言った様な、そんな事を口にした式部に驚く。 だけど、僕が驚いた事には気付かなかった様で、式部はごく普通に話を続けた。 その後、僕と式部は今まで誰にも言えなかった神姫の話を十分に語り合い、ティキときらりはお互い知らない事を情報交換し、親睦を深めていった。 「それじゃぁ、またな」 「うん、また明日」 「今度はバトルフィールドで会おうね」 「ハイですぅ♪ 楽しみなのですよぉ♪」 僕らが別れの挨拶を交わす頃にはもう時間は十分に遅くなっていて、とても高校生が遊んでいる時間とは言えない。 空には満天の星が輝いていた。 「明日も晴れそうだね」 「ハイですぅ♪」 足取りも軽く、僕は家路についた。 ……母さんに怒られる事は必至なんだけど、ね。 終える / もどる / つづく!