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ウサギのナミダ ACT 1-2 ■ 休みの日、マスターは朝早く起き、天気が良ければ近くの公園まで散歩に連れていってくれる。 わたしはこの朝の散歩が大好きだ。 ぴんとはりつめたように澄んだ空気、ひんやりと頬をなでる風、そして蒼く遠い空。 世界はこんなにも広く、きれいなのだと実感できるから。 そして、いつもは厳しい表情のマスターも、このときは少し優しい表情で一緒にいてくれるから。 わたしは、マスターの上着の胸ポケットから顔を出し、朝の世界を眩しく見つめた。 マスターの住まいから歩いて五分ほどで、目的の公園に到着する。 マスターによれば、この界隈では一番広いのだそうだ。 公園内は遊歩道が整備されており、昼間は散歩する人や、走り回る子供たち、のんびりと歩むご老人のみなさんなどがやってくる憩いの場だという。 わたしもジョギングをする人を見たことがある。 でも、日曜日の早朝は、たいてい誰もいない。 今日も人影はなく、わたしたちだけが公園内へと入っていく。 わたしは、マスターを見上げ、 「マスター」 声をかけた。 マスターがわたしを見つめる。 この人の視線はいつも厳しく感じられるけれど、いつもまっすぐだ。 わたしは小首を傾げるようにして、おそるおそるマスターを見た。 するとマスターは口元だけかすかに笑ってくれた。 「よし、行け」 マスターの許可が出た。 わたしは思わず笑顔になり、マスターの胸ポケットから飛び出した。 わたしの身長の何倍もの高さから、空中に躍り出る。 こわがらず、そのまま着地。 膝のクッションを効かせて、着地の衝撃を吸収する。 衝撃を完全に吸収してくれたのは、わたしに両脚に装着されたレッグパーツ。 マスターが作ってくれた、わたしのオリジナル武装だ。 わたしは、身体が沈み込んだ反動を利用して、前方に飛び出す。 レッグパーツのホイールが甲高い唸りを上げる。 わたしは腕を振ってバランスを取る。 一気に加速し、疾走を開始する。 風になる。 ここからはわたしの大好きな時間。 遊歩道を走る、疾る。 思うさま疾駆する。 ものすごい勢いで流れていく公園の木々。 風に溶けていくような感覚。 なんともいえない解放感がわたしを包む。 それは何度感じても、嬉しくて気持ちのいいものだった。 公園を囲む遊歩道の二つ目の角が見えた。 わたしはそこで体を起こし、スピードを落としながら一八○度ターンをする。 簡単なトリックだけど、きれいに決まったのが嬉しい。 わたしはまた前傾姿勢で走り出す。 わたしの大好きな時間の最後には、マスターが待っていた。 左の肘を水平に突き出して立っている。 瞳はわたしに不敵な視線を送っている。 これは課題だ。 神姫のわたしにマスターが出題するパズル。 わたしは、あのマスターの左肘に着地しなくてはならない。 先週は、マスターがベンチに座っていたから、難易度が上がっている。 わたしはスピードを落とさずにマスターへと駆け寄る。 そして走りながら、マスターの肘へと至るルートを見定める。 最後の数メートルを滑走し、タイミングを計ってジャンプ! わたしは、マスターの肘の先にあった公園の植木に飛びつくと、木の幹にホイールを走らせて、巻き付くように登り出す。 一気にマスターの肘の上まで登ると、そこでまたジャンプ。 着地点を見定めながら、一回転一回捻り。 回転を終えた瞬間、わたしはすとん、とマスターの肘の上にお尻から着地して座った。 「よし、上出来だ」 わたしのトリックプレイに、マスターは素っ気ない口調で、そう言った。 わたしは、さっきよりも和らいだマスターの表情を見つけて、やっぱり嬉しくなった。 にこりと笑顔をマスターに贈り、わたしは再びマスターの胸ポケットに滑り込んだ。 わたしの大好きな時間はこれでおわり。 でも、マスターの住まいに帰るまでの間、嬉しさでいっぱいになったわたしの胸はずっと高鳴っていた。 □ 散歩が終わり、朝食を食べて一休みしたら、俺は最寄りの駅前にあるゲーセンにティアを連れて向かった。 ティアをバトルにデビューさせて二ヶ月が経つ。 週末はずっとこんな感じで、散歩のあとでゲームセンターに足を運んでいる。 武装神姫のバトルは、公式の神姫センターや神姫を扱っているホビーショップなどでも楽しむことができるが、俺はもっぱら近場のゲーセンだった。 足を運びやすいのが一番の理由である。 もう一つはティアの武装だ。 ティアのレッグパーツは、俺が部品を集めたり作ったりして組み上げたオリジナルだ。 公式武装がメインの神姫センターは出入りしにくい。 雑多な神姫達が集まるゲームセンターの方が都合がいいのだ。 まだ昼前の時間帯で、ゲームセンターの武装神姫用筐体の周りもあまり賑わっていない。 その方が都合がいい。 むしろそれを狙って、少し早い時間帯に来ているのだ。 俺は対戦用の筐体に座ると、ティアをポッドに収め、サイドボードに武装を並べる。 ここでのバトルは、基本的にコンピューターを介したバーチャルバトルである。 俺はステージを「廃墟」に固定し、一人用のミッションモードを開始する。 コンピューターの出す課題を次々にクリアしていくこのモードは、一人でもバトルができるが、訓練に過ぎない。 俺はティアに細かく指示を出しながら、黙々とミッションを消化した。 つまりはこうして対戦者を待っているのだ。 対戦者待ちをするのには理由がある。 ティアの戦闘スタイルの特性上、市街戦しか有効に戦えないのだ。 つまり、ステージを固定するために、乱入者を待っている。 ……そう思っている間に、早速乱入者がやってきた。 三戦ほどやって、負けたところで席を立つ。 今日はいずれも地上戦メインの神姫とのバトルだった。 よく手合わせをする、顔見知りの常連さん達だ。 負けを喫したのは、バッフェバニー・タイプ。 あの神姫はティアよりも火力がある上に、機動性能もいい。ミリタリーファンに好まれる神姫だけに、市街戦での戦術は見事だった。 俺は神姫バトルを映し出す大型モニターを眺めながら、缶コーヒーを開けた。 「ティア。今のバトル、何が問題だった?」 俺は胸ポケットから顔を出すティアに尋ねる。 負けた後は、必ずこうしてバトルの検討をする。 俺たちは決して強いわけではない。 オリジナルのバトルスタイルを確立するため、細かく検討する必要があるのだ。 「えと……相手がビルにうまく隠れて、なかなか攻撃できませんでした」 「そうだな。市街戦の腕前も相手の方が上手だった。位置取りがうまかった」 「あ、あと、相手の攻撃にさらされることが多かったと思います」 「……こっちの行動パターンが研究されているかな」 「かもしれません……前に戦ったときとは違うタイミングや方向から攻撃を受けたような……」 バッフェバニーは銃火器による攻撃がメインだから、ティアは狙いをはずすような機動を心がけて戦うことになる。 ビルの壁や屋根も縦横無尽に駆け回るティアを、幾度と無く捕捉できるというのは、やはり行動パターンが読まれているのか……。 「いよう、遠野! 調子はどうだ!?」 人の思考を大声でぶちこわして現れたのは、革ジャンを着た派手な男だった。 「……大城、もう少し声を抑えてくれ。それでも聞こえるから」 「おお、うるさかったか? そりゃすまん、わっはっは」 なおのことうるさくしゃべるこの男は、大城大介。 以前バトルしたティグリース・タイプのオーナーだ。 おそらくは今も外に駐車してあるだろう、ごっついバイクを乗り回し、神姫にもエアバイク型のメカに乗せている。 シルバーのアクセサリーをこれでもかと身につけ、派手な柄のシャツに革ジャンという出で立ちは、どこからどう見てもヤンキーである。 バトルの後、難癖付けてきた大城を言い負かしたのだが、なぜか次に会ったときにはやたら気さくに声をかけてきた。 それ以来、俺の姿を見つけては声をかけてくるようになった。 俺たちのどこが気に入ったのだろうか。 それは目下、俺にとって最大の謎であった。 「……そっちは、来たばかりか?」 「おう。虎実のマシンの整備に手間取ってなぁ」 大城の肩を見ると、そこに彼の神姫・虎実が座って、こちらを睨みつけていた。 「……よお、虎実」 声をかけると、ぷい、とそっぽを向いた。 俺は小さく肩をすくめる。 虎実はいつもこんな調子だった。オーナーの大城の態度とは正反対だ。 「悪いな。こいつもほんとは照れてるだけなんだ」 「ばっ……! 照れてなんかいねぇ! 慣れ合うのがイヤなんだよっ!」 ムキになって否定するが、大城はせせら笑っている。 大城がからかい、虎実はさらにムキになる。 この漫才は、とうとう頭に来た虎実がクローを装備し、大城の顔をひっかくまで続くのだ。 ゲームセンターに通うようになって、俺の生活も変わった。 こうして神姫のオーナーたちと一緒に過ごす時間は、いままでの俺の生活にはなかった。 武装神姫を始めなければ、大城などとは一生会うことも話をすることもなかったかもしれない。 そう思うと、神姫はただバトルをするだけの存在ではなく、オーナーたちの枠を広げ、知らない世界を見せてくれる存在なのだと実感する。 「おっ?」 虎実にひっかかれ、顔中をミミズ腫れにした大城が、ゲーセンの入り口に注目した。 「遠野、あそこ見ろよ」 そこには一人の少女がいた。 大城は女の子に目がないので、妙にめざといのはいつものことだ。 だが、大城が注目するのも無理ないと思わせるほど、その少女は美人だった。 ショートカットにした髪と細いジーパンという装いのせいか、活発そうな印象だ。 手には、神姫収納用のアタッシュケースを下げている。 彼女はきょろきょろと店内を見回している。 「神姫のオーナーか……?」 俺が呟く。 すると、その声が聞こえたかのように、少女はこちらを見た。 視線が合う。 すると、少女はまっすぐこちらへやってきた。 隣で大城がなにやら喜んでいるような気配がするが、あえて無視した。 「こんにちは」 とても気さくな挨拶が、微笑みとともにすっと入り込んできた。 「こんにちは!」 「誰かお探しですか」 大城の挨拶が終わるのを待たずに、俺は本題を切りだした。 すると、彼女はちょっと驚いた顔になったが、すぐに落ち着いて、こう言った。 「ええ。……ハイスピードバニーのティアっていうオリジナルの神姫をご存じですか? このゲーセンがホームグランドだって聞いたんですけど」 俺と大城は顔を見合わせた。 「ハイスピードバニー?」 「はい。なんでも地上戦専用の高機動タイプで、バニーガールの姿をしているとか。とても 特徴的な戦い方をすると噂に聞いています」 「……それで名前がティアなら、俺の神姫かもしれないけれど……」 「ほんとですか!?」 このショートカットの美少女は声を上げて、にっこりと笑った。 ほとんど反則な笑顔だ。 「よかったぁ。会えないと大変なんですよ。何度も通わなくちゃいけないし」 「しかし、ハイスピードバニー?」 彼女が口にした呼び名だ。 そんなベタな名乗りを上げたことはないはずだが……。 「この近辺では有名ですよ。みんなハイスピードバニーという二つ名で呼んでますね」 俺は苦い顔をした。 あまり目立たないように戦ってきたつもりだったが、やはり特徴的な戦闘スタイルが目に付くのか。 しかも、二つ名まであるのか。 そんな心配と同じくらい、ひねりのないネーミングに不愉快になる。 「それで、君はわざわざ、ティアと戦いに来たというわけ?」 「はい。遠征して、いろいろなタイプの神姫と戦うのが好きなんです」 この少女は、迷い無くはきはきと答える。 年の頃は、俺と同じか少し下くらいだろうか。 武装神姫のプレイヤーにはとても見えない。 テニスか何かをやっていると言われた方がよほど現実味があった。 「バトルしてもらえませんか? 私の神姫と」 「君の神姫は……」 「ここよ、ここ」 小さな声がしたのは、彼女の肩あたり。 いつのまにか、一体の神姫が、少女の右肩に座っていた。 特徴的な巻き髪を揺らしながら、にこにこと笑っている。 「イーダ・タイプか……」 イーダ・タイプは高機動タイプのトライク型だ。 地上戦専門の神姫だし、確かにティアとは噛み合うだろう。 だが、本体がイーダ・タイプだからと言って、武装までそうだとは限らない。 「ミスティよ。よろしくね」 神姫は自らそう名乗った。 それを聞いた大城がいきなり叫びだした。 「イーダのミスティと言えば! もしかして、エトランゼ!?」 「……まあ、そんな呼ばれ方もしてますね」 「エトランゼ?」 俺は大城の方を向いて尋ねた。 すると、大城は大きなため息をついて、俺を見る。 「遠野、おまえは俺よりも神姫に詳しいくせに、なんで他のプレイヤーや噂には疎いんだ……」 失敬な。雑誌に出るようなプレイヤーたちなら俺だってチェックしてる。 大城はまたひとつため息をつきながら、俺に解説してくれた。 「『異邦人(エトランゼ)』のミスティと言えば、この沿線あたりじゃ有名な神姫だぜ。 噂になっているような強い神姫を相手にするために、あちこちのゲーセンやホビーショップの対戦台に現れる凄腕の神姫プレイヤー。 腕前もかなりのものらしい。それなりの腕の神姫をあっさり負かしたりするそうだ。 で、その神姫のマスターは、結構な美少女って噂だけど……」 大城はちらりとミスティのマスターを見た。 「噂通りってとこだなぁ」 彼女は困ったように笑っている。 「それで、あなたの神姫は? 今日は連れてきてないですか?」 「いや……ティア」 俺がそっと促すと、胸ポケットから、ティアがおずおずと顔をのぞかせた。 「わぁ、かわいい!」 少女は身を屈めて、俺の胸ポケットをのぞき込む。 ティアは恥ずかしいのか、半分顔をポケットの縁で隠しながら挨拶した。 「こ……こんにちは……」 「こんにちは」 返事を受けて、ティアはますます顔を隠してしまった。 「ティアは照れ屋さんなのかな?」 「ああ、ちょっと人見知りでね」 「噂通り、うさ耳なんですね。かわいいなぁ」 少女は無邪気に笑う。 なんだか、この笑顔に調子を狂わされっぱなしだ。 「それで、どうですか?」 「え?」 「私のミスティとバトルです」 「ああ……」 無邪気な笑顔とバトルという言葉に違和感を感じて、俺は少し戸惑う。 だが、断る理由がない。名の知れた、しかも地上型とのバトルなら歓迎だ。 「ティア、どうだ? やれるか?」 「マスターが……戦いたいというのなら」 俺は頷くと、少女に向き直った。 「フィールドは、廃墟か市街地。それでもいいかな?」 「望むところです」 そう言って、少女はにっこりと笑い、空いている筐体に歩み寄った。 俺も筐体の反対側へと移動する。 まばらだったギャラリーが、少しずつ俺たちの座る筐体の前に集まりだした。 まだ始まってもいないバトルにギャラリーがつく。 彼女の知名度と、俺たちの注目度は、俺が思っている以上のものであるらしい。 筐体のサイドボードに武装を並べ、バトルの準備をしていると、脇に大城がやってきた。 「なんだ、大城? 彼女の側で見てなくていいのか」 「おまえの次に、俺が対戦申し込むんだよ。おまえの戦略、しっかり見せてもらうからな」 すごみのある笑い。 なるほど、俺から戦略を盗もうという寸法か。 「だったら、一つ教えてくれ」 「おう、なんだ?」 「ミスティは地上型か、それとも違うタイプか。知っているか?」 「噂じゃ、普通のイーダだって話だな。 バトルを見た訳じゃないから、本当のところはわからんが、イーダのくせに、飛行型の神姫もあっさり倒すんだそうだ」 「本当か?」 「まあ、噂だがな」 大城は肩をすくめた。 その噂が本当だとしたら、ミスティは相当な実力の持ち主だ。 地上型の神姫が、飛行型の神姫から勝利を奪うのは難しい。自分より上にいるというだけで有利なのだ。 それをあっさり覆すということは、何か特別な力がある可能性が高い。 それが装備なのか、戦術なのか、策略なのかはわからないが…… 用心に越したことはない。 俺はそう判断する。 筐体の向こうを見てみれば、ミスティのマスターと目があった。 不敵な微笑み。 バトルに向かうにふさわしい表情になった。 なるほど、彼女も確かに神姫プレイヤーなのだ。 それでは始めよう。 俺はティアをアクセスポッドに送り込み、スタートボタンを押した。 次へ> トップページに戻る
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―――――2038年、8月31日――――― ……ぼくは、とぼとぼと帰り道を歩いていた 「元気出してください、殿。ほら、明日から学校ですよ、ね?」 ぼくの肩の上に乗って、そこから優しい声をかけてくれるのは、ぼくの大切なパートナーの『あかね』 『紅緒』という、サムライをモチーフにした武装神姫だ 「それに、他の店ならばまだあるかもしれないではありませんか」 「……そうは言っても……」 ぼくの元気が無い理由……それは今朝、あかねの鎧を壊してしまったから それで、買い直そうと何件かのホビーショップを回ったんだけど、なぜか紅緒のだけは在庫切ればかり 『そもそも売れ筋ではないから、最初から少なく発注する』そうで、買う人が五人もいれば売り切れになってしまうんだそうだ 『ここならあるかも』と言われて紹介してもらった場所は、なにやら大きな事件があったらしく休業中 入り口に張られた黄色いテープには大きく「KEEP OUT」と書かれていて 辺りには無数の機械……たぶん神姫だと思う……の壊れたパーツが散乱していた それなりに大きなそのビルの窓ガラスはいくつか割れていて、辺りを警察の人がせわしなく走り回っていた 近くにいた人に、ここは何と言う名前の会社なのかと尋ねてみると、さっきのホビーショップで教えてもらった、ぼくの目的地だった ……まったく、ついてないよ…… 明日から二学期が始まるから、学校の帰り道に友達とゲーセンに寄ろうと思ってたのになぁ…… 「えぇと……鎧が無くても戦えます!!」 さすがに無茶だから、それ…… 「…………殿! 殿! そこに何かがあります!!」 帰り道の途中、あかねが道端で何かを見つけたみたいだ 「ほら、その電柱の影に!」 あかねにいわれるまま視線を向けると、そこには小さな人が倒れていた……というより、神姫が落ちていた そのまわりには、その神姫のものと思われる武装が点々と散らばっている 「保護しなくては!!」 あかねは人一倍正義感がつよいから、こんなことを言い出したら止まらなくなる ぼくはその神姫と武装パーツをひとつ残らず拾い上げると、バッグからハンカチをとりだして、やさしく包んでバッグに入れた 「さぁ殿! 早く父上殿にお見せして、助けて差し上げなくては!!」 ぼくたちは、さっきまでの意気消沈っぷりをきれいさっぱり忘れて、帰り道を駆け出した…… ……これがぼくたちと、彼女……カインの出会いだった…… 第一話「ぼくとカイン」 ―――つづく――― もどる
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【武装神姫】セッション1-1【SW2.0】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm17995262
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神姫/CSC/武装リスト 神姫一覧 CSC一覧 武装一覧カテゴリーC(最大装備数4) カテゴリーB(最大装備数2) カテゴリーA(最大装備数1) カテゴリーS(最大装備数6) 追加オプション ミニコラム。神姫の隠し能力について。 神姫一覧 1 アーンヴァル HP16 回避力に優れた飛行型の神姫。 HPは低いが、回避で補えればかなりの強さを誇る。 一撃必殺のレーザーも魅力の一つ。 2 ストラーフ HP20 防御力、攻撃力の双方に優れた重装型の神姫。 HPも高いが、回避力が下がるスロットがあると言う欠点が存在する。 必殺技は威力、命中、防御を兼ね揃えたチーグル。 3 マオチャオ HP18 攻撃力と回避力に優れた近接戦型の神姫。 格闘以外の装備とはあまり相性が良くない。 スーパーネコキックは威力では劣るが隙の無い攻撃。 4 ハウリン HP20 HPに特化した万能型神姫。 性能には補正値が無いが、HPが-5になるまで戦闘を続行する。 必殺技は隙が大きいが威力、命中共に高いハウリングサンダー。 5 フォートブラッグ HP18 平均的な能力を持つ砲撃型の神姫。 射撃武器に限り、命中の出目が『2』も必中値になると言う特性を持つ。 必殺技は、次回攻撃の性能を向上させる非攻撃型だが、射撃武器にしか効果が無い。 6 エウクランテ HP18 回避力ではアーンヴァルに劣るが、より攻撃的な空戦型神姫。 耐久力も多少向上しており、汎用性は随一。 必殺技は回避を向上させるプレステイル。だが、最終ターンには……。 7 アーク HP18 命中率と攻撃力に優れた可変型神姫。 射撃に対する適正が高く、性能面では非常に優秀。 必殺技も強力な鳴物入りの最新鋭機。 8 イーダ HP18 回避力と攻撃力に優れた可変型神姫。 格闘に対する適正が高いが、射撃も苦手ではない。 必殺技も含めて、全体的に高性能。 9 飛鳥 HP16 安価で整備性に優れた、回避主体の飛行型神姫。 他の飛行型と比して能力面で劣るが、必殺技も含めれば充分に強力。 さらに、撃破されても一度だけ再出撃できると言う非常識な能力も持つ。 10 ルムメルティア HP18 防御と攻撃に長けた重量級神姫。 ストラーフの完全上位機種であり、ストラーフより劣る面はHPだけ。 もちろん、だからと言って必ず勝てる訳ではない。 11 ティグリース HP18 攻撃面に優れた神姫。 だが、最大の特徴はなんと言っても必殺技。 全ての格闘攻撃力が倍化するが、発動までの時間に注意。 12 ジュビジー HP17 一ターンに6点以上のダメージを受けた場合、5点になるまで減らす能力を持つ。 攻撃や防御/回避に得手不得手が無く、扱いやすいのも特徴の一つ。 必殺技には謎が多いが、極めれば最強の技らしい。 13 フブキ HP18 選ばれなかった不遇の神姫が帰ってきた。 以前とは全く別物の能力を得て、最強神姫の一角を狙う。 汎用型CSCを装備する事無く、全てのA武装を装備可能。 14 アーンヴァルB HP18 アーンヴァルの完全上位機種。 ノーマルタイプと同等の機動性を持ちながら、全てのスロットに攻撃力+1が付いている。 以前にアーンヴァルを使用した事のあるオーナーのみ選択可能。 新規に作成するのではなく、以前に使用したアーンヴァルを改装することもできる。 CSC一覧 1耐久型CSC 特殊能力:『頑丈』 HPに+5 2ぷちマスィ~ンズCSC 特殊能力:『追撃』 全てスロットのアクションに攻撃力+1(非攻撃以外) 3重装型CSC 特殊能力:『重武装』 カテゴリーBのアクションを3つまで装備できる。ただし、回避力-1のスロットがどこかに2つできる。 4汎用型CSC 特殊能力:『万能型』 自らのタイプ以外のカテゴリーAアクションを選択可能。最大装備数が1なのは変わらず。 5逆境型CSC 特殊能力:『最後の一撃』 HPが5以下になっている場合、全てのスロットの攻撃力が+3(非攻撃以外) 6軽装型CSC 特殊能力:『高機動』 カテゴリーBの装備を1つしか装備できない。ただし、どこか2つのスロットに回避力+1の修正がつく。 7超攻撃型CSC 特殊能力:『見敵必殺』 このCSCを装備した神姫は、B武装が装備できなくなる代わりにA武装を2つ装備できる。 8重装甲CSC 特殊能力:『追加装甲版』 全てスロットに防御力+1 9カウンターCSC 特殊能力:『対抗能力』 このCSCを装備した神姫は相手のCSCの能力を無効化できる。 1、2、5、6、8はそのまま利点を消去。 3、4、7はその効果で装備した武器の攻撃力を-1する。 非攻撃だった場合は効果なし。 武装一覧 カテゴリーC(最大装備数4) C1 レーザーソード/格闘 アクション :攻撃力3 命中率5 リアクション:回避力1 防御力0 C2 アルヴォ/射撃 アクション :攻撃力4 命中率4 リアクション:回避力1 防御力0 C3 アングルブレード/格闘 アクション :攻撃力4 命中率4 リアクション:回避力0 防御力2 (エウロスが同データ) C4 ウズルイフ/射撃 アクション :攻撃力5 命中率4 リアクション:回避力0 防御力1 (アサルトカービンが同データ) C5 研爪/格闘 アクション :攻撃力6 命中率4 リアクション:回避力0 防御力0 (エアロヴァジュラが同データ) C6 防盾/格闘 アクション :攻撃力3 命中率3 リアクション:回避力1 防御力2 (ハンマーシードが同データ) C7 十手/格闘 アクション :攻撃力3 命中率4 リアクション:回避力1 防御力1 (滅爪が同データ) C8 棘輪/射撃 アクション :攻撃力4 命中率3 リアクション:回避力1 防御力1 (ゼピュロスが同データ) C9 アルファ/射撃 アクション :攻撃力5 命中率5 リアクション:回避力0 防御力0 C10 アサルトライフル/射撃 アクション :攻撃力6 命中率3 リアクション:回避力0 防御力1 C11 シルバーストーン/射撃 アクション :攻撃力6 命中率4 リアクション:回避力0 防御力0 C12 DFナイフ/格闘 アクション :攻撃力5 命中率5 リアクション:回避力0 防御力0 (風神/雷神が同データ) カテゴリーB(最大装備数2) B1 リアウイング アクション :非攻撃 リアクション:回避力1 防御力1 特殊効果 :次のターン、回避力+1 B2 グレネード/射撃 アクション :攻撃力7 命中率3 リアクション:回避力0 防御力2 B3 旋牙/格闘 アクション :攻撃力5 命中率4 リアクション:回避力1 防御力1 B4 吠莱壱式/射撃 アクション :攻撃力5 命中率5 リアクション:回避力0 防御力2 B5 滑空砲/射撃 アクション :攻撃力7 命中率4 リアクション:回避力0 防御力1 B6 スーパーシルバーストーン/射撃 アクション :攻撃力6 命中率4 リアクション:回避力1 防御力0 B7 エアロチャクラム/格闘 アクション :攻撃力6 命中率4 リアクション:回避力0 防御力2 (グリーンカッター/朱天が同データ) B8 ボレアス/射撃 アクション :攻撃力4 命中率4 リアクション:回避力1 防御力0 特殊効果 :命中のサイコロが1だった場合。 攻撃力は8になる。 カテゴリーA(最大装備数1) A1 レーザー(アーンヴァルのみ) アクション :攻撃力10 命中率3 リアクション:回避力0 防御力1 A2 チーグル(ストラーフのみ) アクション :攻撃力8 命中率4 リアクション:回避力0 防御力2 A3 スーパーネコキック(マオチャオのみ) アクション :攻撃力6 命中率4 リアクション:回避力1 防御力2 A4 ハウリングサンダー(ハウリンのみ) アクション :攻撃力9 命中率5 リアクション:回避力0 防御力0 A5 砲撃モード(フォートブラッグのみ) アクション :非攻撃 リアクション:回避0 防御2 特殊効果 :次の攻撃時、攻撃力+3、命中率+1、防御力+1 砲撃モードは出続ける限り効果が重複する。 (2連続で砲撃モードを行った場合、攻+6、命+2、防+2) ただし、効果を発揮するのは『射撃』武器のみに限定。 一度攻撃を行うとパラメータ強化は解除される。 A6 プレステイル/テンペスト(エウクランテのみ) アクション :非攻撃 リアクション:回避力1 防御力2 特殊効果 :次のターン、回避力+1 ただし、第10ターンに使用したときのみテンペストが発動する。 テンペストは、命中率4、攻撃力9。回避防御は全て0。 A7 H.S.T.(アークのみ) アクション :攻撃力8 命中率4 リアクション:回避力0 防御力0 特殊効果 :使用したターンは、格闘攻撃からダメージを受けない。 A8 H.M.T.(イーダのみ) アクション :攻撃力8 命中率4 リアクション:回避力0 防御力0 特殊効果 :使用したターンは、射撃攻撃からダメージを受けない。 A9 機銃掃射(飛鳥のみ) アクション :攻撃力6 命中率4 リアクション:回避力2 防御力0 A10 パイルキャノン(ルムメルティアのみ) アクション :攻撃力7 命中率4 リアクション:回避力0 防御力3 特殊効果 :この武器は自分に有利になるように射撃/格闘の種別を入れ替えられる。 A11 キュベレーアフェクション(ジュビジーのみ) アクション :特殊 リアクション:回避力0 防御力? 特殊効果 :この防御でダメージを0にした場合、相手の攻撃をそのまま跳ね返す。 自分で自分に攻撃を行ったものとして命中を含めて処理を行う。 その際の命中値はサイコロを別に振る。 (必中(出目1)の攻撃を跳ね返しても必中になるとは限らない) 防御力は他の装備の防御力の総和と等しい。 A12 真鬼王(ティグリースのみ) アクション :非攻撃 リアクション:回避力0 防御力2 特殊効果 :この能力は複数回使用しないと発動しない。 (B武装の数+S武装の数+1回) 発動後、戦闘終了まで『格闘』のダメージを2倍にする。 発動後にこのアクションが選択された場合は防御力以外の効果なし。 A13 レーザーB(アーンヴァルBのみ) アクション :攻撃力10 命中率4 リアクション:回避力0 防御力0 カテゴリーS(最大装備数6) 前回参加者のみの特典装備。 ただし、配布された個数までしか装備できない。 S1 レーヴァテイン/格闘 アクション :攻撃力7 命中率4 リアクション:回避力1 防御力1 S2 ロンギヌス/格闘 アクション :攻撃力6 命中率5 リアクション:回避力2 防御力0 S3 ヴァルムンク/格闘 アクション :攻撃力7 命中率5 リアクション:回避力0 防御力2 S4 ミサイル/射撃 アクション :攻撃力10 命中率5 リアクション:回避力-1 防御力0 特殊効果 :この武器は偶数回目に使用したときには非攻撃になる。 即ち、一度使用したらリロードしないと次弾が撃てない。 S5 モアイ像/射撃 アクション :攻撃力9 命中率3 リアクション:回避力0 防御力2 S6 マジカルステッキ/射撃 アクション :攻撃力3 命中率- リアクション:回避力-1 防御力-1 特殊効果 :この攻撃は6以外で必中となり、防御力を無視して3ダメージを与える。 S7 ヂェリカン アクション :攻撃力0 命中率0 リアクション:回避力0 防御力0 特殊効果 :サイコロを1個振り、出た目に従う。 1,2『ニトロ』:次ターン攻撃力+2、命中率+1 3,4『クーラント』:次ターン回避力+1、防御力+2 5,6『オイル』:HP回復5点(最大値は超えない) 追加オプション すべて前回参加者用の特典。 どれか1つ装備可能。 1ソニックダイバー 全ての攻撃に+2 回避に+1 HPが最大値から10点以上減ると破壊され、効果を失う。 2ビッグバイパー 全ての攻撃に+3 命中に+1 防御に+1 HPが最大値から10点以上減ると破壊され、効果を失う。 3交通安全のお守り 武器選択のとき、1の出目が出やすくなる。 一度効果を発揮すると効力が無くなる。 (一番最初に6、2の出目が出たとき1の出目として扱う) 4合格祈願のお守り 武器選択のとき、3の出目が出やすくなる。 一度効果を発揮すると効力が無くなる。 (一番最初に2、4の出目が出たとき3の出目として扱う) 5安産祈願のお守り 武器選択のとき、5の出目が出やすくなる。 一度効果を発揮すると効力が無くなる。 (一番最初に4、6の出目が出たとき5の出目として扱う) 6対刃装甲 格闘武器に対し防御力が+1 7防弾装甲 射撃武器に対し防御力が+1 8追加センサー どこか3つのスロットの命中率が向上する。 9ECM 相手の使用した非攻撃武器を1回だけ無効化する。 ミニコラム。 神姫の隠し能力について。 サラ(仮)「ここでは、為になる、……かも知れない耳寄り情報をお話します」 犬〇「まずは、隠し能力についてのヒントですね?」 テッコ「……先ずは『隠し能力』のおさらい」 犬〇「全ての神姫は、非公開のデータとして、戦闘に影響を与えるデータを持っています」 サラ(仮)「はい。では、そのデータにどんなものがあるかを見ていきましょう」 テッコ「……一つが単純な『能力値補正』能力」 犬〇「前回からの神姫ですとアーンヴァルとストラーフがそうですね」 テッコ「……これは、特定のスロットに装備した武器の性能を強化するもの」 サラ(仮)「例えば、“スロット1に防御力+1”、とか、“スロット1に回避力+1”とかですね」 犬〇「これに対し、少しだけ変則的な能力として、『限定能力値補正』能力があります」 テッコ「……これも能力値を強化するものだけど、条件が付く」 サラ(仮)「例えば、“スロット1が『射撃』なら攻撃+1、命中+1”等ですね」 テッコ「……もちろん、条件が一致しなければ何の効果も無い」 犬〇「前回からの神姫では、マオチャオが『能力値補正』と『限定能力値補正』を併せ持っていました」 テッコ「そして、更に特殊な例……、『ルール改変型』」 サラ(仮)「これは、既に公開されている『ルール』を限定的に改変する物です」 犬〇「例として、実際には誰も持っていないルールを一例として挙げておきます」 『この神姫の参加する戦闘は、最大8ターンで終了する』 サラ(仮)「例えば、こんな『ルール改変型』能力を持った神姫が居た場合、『戦闘は10ターンで終了する』と言うルールが変更されてしまいます」 犬〇「こちらの典型例と言えるのが今回追加された『飛鳥』の能力だそうです」 サラ(仮)「飛鳥は通常の『能力値補正』能力に加え『ルール改変型』能力を持っています。……もっとも、『能力値補正』能力の内容やHPで他の神姫劣る為、一概に強いとは言えませんが、サプライズがあるのも確かです」 テッコ「……『ルール改変型』能力を保有している神姫は、ハウリン、フォートブラッグ、ジルダリア、ジュビジー、飛鳥の5体が現在確認されてる」 サラ(仮)「発動すると一目瞭然な神姫から、効果の程がイマイチ分かり辛い神姫まで様々ですが、これらの神姫のバトルは通常の戦闘では起こり得ない事が起きる可能性があります」 犬〇「今回の敵キャラでもある『犬子さん』はハウリンですので、何か隠し玉があるのは覚悟してください」 サラ(仮)「まあ、一応『サラ』も『ルール改変型』能力があるのですけど……」 テッコ「……あんまり凄くなかった」 サラ(仮)「はぁ……」 ※第二回の時のコラムです。 読者参加企画『武装神姫うきうきバトル』に戻る。 ALC
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与太話8 : ロストデイズゲーム 注1)ライトノベル『武装神姫 LOST DAYS』のネタバレがあるかもしれません。 注2)一ノ傘射美:第三章登場キャラ。見た目は姫乃のロリバージョン。 「マスター。正直なところ、ダメだと思うんです」 エル操るマルスにネスが吹っ飛ばされたところで、エルは唐突にぽつりと呟いた。机の上にペタンと座り込み、ゲームのコントローラを構えて必死になって画面を目で追うアルトレーネ。その姿に、バトルで見せてくれる凛々しさは皆無だった。 残機も残り僅かとなったこの『スマブラ99機耐久戦』は今のところ、エルが大差をつけてリードしている。COMは早い段階で姿を消した。俺の隣で必死にコントローラをガチャガチャやっている一ノ傘ロリ姫、もとい射美は残機が一桁になった段階で逃げに徹し、今は遠くからファイヤーボールをばら撒いてばかりいる。 俺はといえば、今日は調子が乗らないらしく自滅が多いのだが……まさかスマブラでエルにダメ出しをされるとは思わなかった。 「弱っちくてすみません……精進しますんで、はい……」 「パパをいじめちゃメーよエル! ママに言いつけるからね!」 「あ、いえ違うんです。スマブラのことじゃなくて、武装神姫のことでちょっと、よくないなぁ、と思いまして」 声はどこか上の空でぼんやりとしたエルだったが、画面上のマルスはステージ上を颯爽と駆けてマリオに接近し、慌てて放たれたマリオのスマッシュに上手くカウンターを合わせた。また残機を一つ減らした射美は俺の膝の上で暴れた。小学校高学年程度の体格とはいえ、耐久戦の間ずっと居座られているもんだから、もう脚の感覚なんてとっくに無くなっている。さらに射美が暴れる度に俺の腕を揺さぶって邪魔をされる。 姫乃、早く帰ってこないかなぁ……。 「一昨日マスターが買ってきた神姫のラノベ、ちょっと読んでみたんです。表紙のとおり、といいますか案の定アーンヴァル型がメインで、ライバルにストラーフがいて、アルトレーネの『ア』の字すらなくて……ここまではいいんです。ええ、いいですとも。アニメ化も含めて、どーせ主役を張れるのはあの二人だけですから」 「パパ、こういうのを『卑屈』って言うんでしょ?」 「そういうことを本人の前で言うな」 「私が物申したいのは、ストーリーのほうなんです。せっかく本になったのに、中身は刑事さんが神姫がらみの事件を追う無難な話ですよね。もうちょっと捻って欲しかったです」 「無難って……」 「ぶっちゃけSSWikiの中にありますよね、似たようなお話」 「パパ、こういうのを『メタフィクション』って言うんでしょ?」 「難しい言葉を知ってるなぁ射美は。良い子だ、偉いぞ、だから少し静かにしてような」 話しながらも、スマブラの試合は淡々と進んでいく。 射美の最後の一機が落とされ、ネスとマルスの一騎討ちになった。エルが三六機、俺はあと十三機残っているが、いい加減面倒になってきたので、コントローラを射美に渡してやった。嬉々として受け取る射美だが、マリオと違って扱いづらいネスでは数分と持たないだろう。 「研究所から脱走したり、小学生とかに拾われたり、悪い人に悪用されたりするのは、もうお腹いっぱいです。つまり何が言いたいかというとですね、いくら万人向けのメディアを作ろうとしても、武装神姫で今以上のものを作るのは難しいのではないかと思うわけですよ私は」 「パパ、『めでぃあ』って何?」 「メディアより先に卑屈とかメタを覚える女の子って、将来大丈夫なのか……」 「MMSの軍事利用が最たる例だと思うんです。確かに私達神姫自身ですら簡単に想像できますよ。小さくて、心を持つけど忠実で、おまけに大量生産できる神姫が戦争に向いてることくらい。でも、だからこそ、簡単にそんなお話を作ってほしくないんです。もっと私達の可能性を探ってほしいんです。といいますか――」 長時間小さなコントローラを握っているにもかかわらず、エルは疲れるどころか、むしろ熱弁するほどマルスの技はキレを増していった。射美操るネスのパーセントは3ケタに到達することもなく、次々と残機を減らされていく。 「神姫って基本、ロクなことに使われてませんよね。ロボット三原則とかガン無視じゃないですか」 「エルだって、俺の眉間に爪楊枝刺したじゃん」 「うわっ、エルひどーい」 「そ、それは手が滑ったといいますか、ノリといいますか……と、とにかく! ゲームのプチストーリーみたくイチャイチャしようにも、身長差のせいで見ていて虚しくなりますし、それなら、小さな神姫が世界を破滅から救ったりするほうが壮大で良い感じだと思うんです。プレデターとかやっつけたいです」 「世界を救う、ねぇ」 「ちなみに、勿論私はイチャイチャは大歓迎ですよ」 「射美の前で変なこと言うな!」 「大丈夫だよパパ、あたしは何も分かってないから。ママにもちゃんと内緒にするね」 「子供が変な気を回すな!」 マルスがネスの最後の一機を撃墜して、長かった対戦がエルの圧勝でようやくの決着を迎えた。膝の上の射美が次をやろうと言い出す前に、ゲーム機本体の電源を切った。なぜ99機耐久戦なんて始めたのかは忘れたが、もうスマブラは暫くやらなくていい。 「世界を守るのが無理でも、マスターを守るために戦いたいです。『マスターには指一本振れさせません!』とか、どんな神姫だって憧れる台詞なんです。でも身長が違いすぎますから、マスターを後ろに庇ったりできなくて、想像の中でしか実現できないんです。この全神姫の葛藤から解放してくれるような小説やアニメがあると、私は嬉しいなーと思うわけですよ」 「ははあ。その神姫愛好家以外に受けなさそうなストーリーは世に出ないから、神姫はダメだなんて言ったのか」 「です」 「パパとエルが一緒の大きさになればいいの? あたし知ってるよ。あれ、ほら、ライオン? だっけ。ゲームのやつ」 「ライドオンのことですか? あれは言葉の響きがエロいからダメです」 「だから射美の前で変なこと言うなや!」 「大丈夫だよパパ。パパだってママによくライドオンしてるじゃない」 「誰だ射美をこんな子に育てた奴は! ぶっ飛ばしてやるから出てこい!」 「もういっそのこと、アダルトなシナリオを作ったほうが知名度の向上に繋がるんじゃないでしょうか」 「18禁から離れろぉっ!」 世界とマスターを守ってみたい、というのならば、そうさせてみることにした。 「結局ゲームですか。コンティニューできる世界じゃあんまり緊迫感がないです」 「コンティニュー禁止の一発勝負だ。1回500円もするんだからな。いいか、これ1プレイしたら帰るぞ」 筐体でのバトルをするばかりが神姫センターではない。別フロアには、神姫達が遊ぶための設備がある。今俺とエルが使っているのもその中の一つだ。 普通のゲームセンターによくあるガンシューティングの神姫バージョン、といったところか。仮想空間上に神姫と、ライドシステムにより仮の素体を操るマスターが乗り込み、ステージを攻略していくのがこのゲームだ。二人のどちらかのLPが尽きたらゲームオーバー。ただしマスターが使う素体に攻撃能力はなく、神姫はマスターを守りながら先へと進まなければならない。まさに、エルが望んだ通りのシチュエーションだ。 二組でのプレイも可能だが、姫乃は残念ながら射美のおもりをしている。 「大丈夫ですよマスター、私一人で十分です。マスターは私の背中だけを見て進んでくれればいいです」 「でもなあ、この手のゲームって大体コンティニュー前提で作られてるはずだぜ。何ステージあるか知らないけど、最初のステージで即ゲームオーバーとかもあり得るからな」 「マスターは私の剣が信じられませんか?」 エルは剣を軽く横に振った。小さな腕で振るわれた一閃は、エルの成長が一目で見て取れるくらい、ブレがない。 ニヤリと笑みをこぼしたエルは俺の手から500円玉を奪い取って、投入口に入れた。 「あなたの戦乙女は、あなたが思っているよりちょっぴり強いですよ?」 意識が仮想空間に飛ばされ、仮の体を与えられた。 降り立った場所は、木造の建物が規則正しく立ち並ぶ街だった。ただし、どこもかしこも、火の手が上がっている。人の姿が見当たらない代わりに、いかにも「凶暴だぞー!」と言わんばかりのモンスターがうろついている。 一直線に伸びる道の遥か先に、大きな教会らしきものが見える。このステージでのやるべき事は非常にシンプルだ。 モンスターを倒しながら、教会を目指せ。 前に立つエルは背を向けて、教会を見据えている。身長が同じくらいになったからだろうか。ロングコートをはためかせ、ゆったりと二本の剣を構える後ろ姿は、そこにいるだけで俺に安心感を与えてくれる。 「フフッ、マスターが後ろにいてくれるだけで、なんだか力がみなぎってくるみたいです。じゃあ行きますよ、しっかり付いてきてください!」 順調だったのは、最初のオオカミ数匹を切り崩したまでだった。 あれよあれよという間に多数のモンスターに囲まれ、パニックに陥った俺達はがむしゃらに走り、気がつけば中ボスらしき巨人の前まで来ていた。既に精根尽き果てていた俺達は、二人仲良く巨人の棍棒に薙ぎ払われ、倒れるのだった。 仮想空間から戻ると、目の前のスクリーンにコンティニューのカウントダウンが表示されていた。カウントダウン解除には、500円玉が必要になる。 「ふう……じゃ、帰ろうか」 「もう一回! もう一回だけお願いします!」 「ダメだ。一回きりって約束したろ」 「さっきは惜しかったんです! 次は必ずや! 必ずやマスターをお守りしてみせます!」 「どこに惜しい要素があったんだよ……あの調子じゃ全クリまでに諭吉が飛ぶぜ」 「マスターの鬼ー! けちんぼー!」 「フハハハハハハ! なんとでも言うがいい、俺は500円のためならプライドをも捨てられる男!」 「器が小さ過ぎますっ!?」 懇願するエルを無視して帰ろうとした、その時だった。 「あれ? 背比やん。へぇ、背比もこんなゲームで遊ぶんやね」 ばったり竹さんと出くわした。肩から下げるトートバッグからはいつも通り、 「鉄子ちゃん、まさか弧域が来てることを知ってて……」 「下種の勘繰りはよしなさい、コタマ。久しぶりですね、エル殿。あなたもあのゲームを?」 コタマとマシロが顔をのぞかせている。 エルはゲームをやっていたかと問われても、「ええ、まぁ……」と歯切れの悪い返事をすることしかできなかった。ステージを1つもクリアできなかった、とは口が裂けても言えないんだろう。 「アタシも今からやるところなんだけどさ。で、エルは何分だった?」 「は? 何分?」 「クリアした後にクリアタイムが出るじゃん。覚えてない?」 「そ、そうですね、そういうのは、ちょっと……」 「コタマったら、マシロの記録を今日こそ抜くんやって息巻いとるんよ。ほら、あれ」 竹さんが指差した先、さっきまでコンティニューのカウントダウンが表示されていたスクリーンに、今度は歴代ランキングが表示されていた。 1.MASHIRO 00:09:44:20 Continue,00 2.KOTAMA 00:13:36:49 Continue,00 5位までコタマの名前が並んでいて、それ以降から他の名前が登場するが、どの記録も数十分、コンティニュー数回が記録されている。最下位のコンティニュー回数など、見るだけでゾッとしてしまった。 このゲームの本質はえげつないものだった。コタマやマシロは別として、これは、攻略専用に対策した装備を用意できて、好きなだけコンティニューできるだけの財力を持ったブルジョワマスターだけが楽しめるゲームだ。 「お遊びにそこまで熱くなることはないでしょう。妹君に付き合っていただくのもこれで最後にしなさい」 「お遊びで10分切っといて勝ち逃げ!? あームカつく! 今日こそギャフンと言わせてやる! ほら始めるよ鉄子ちゃん、アタシが言った通りに動いてよね!」 「へいへい」 「あ、そうだ。せっかく二人プレイできるんだし、エルと弧域もやらない? 足速いエルが先行して面倒くさい奴倒していけば、かなり時間短縮できるよね。弧域のことは心配しなくても、アタシが【指一本振れさせないからさ】」 「…………こ」 「こ?」 「コタマ姉さんなんて大っキライですうううううううううっ!」 フロアにいる人達の足の合間を縫って、エルはフロアから出ていってしまった。竹さん、コタマ、マシロは呆気にとられて固まっている。 「ねぇ弧域。アタシ、何か悪いことした?」 「察してくれ、色々と」 「なんか、ごめんね背比。私もエルのこと探しに行こうか?」 「いや、大丈夫。こっちこそ突然すまん。じゃ、俺達は帰るわ」 この後、エルはすぐに見つかった。 一階で店員として働く神姫達がエルを慰めてくれていて、俺の顔を見るなり「お客様といえど許さん! そこになおれ!」と説教モードに入った。 店内のど真ん中、普通にお客さんがいる中で理不尽な罵詈雑言を浴びせ続けられること十数分、俺は帰りの電車賃として取っておいた500円玉を出すことで、ようやく解放されるのだった。 じゃあ貴様、にゃーは面白いストーリーを作れるのか、と指摘されると、ゴメンナサイと言う他ありません。 LOST DAYS をディスりたいわけではなく、もうちょっとコアな神姫ファン向けのストーリーを作ってもいいと思うんです(ただし携帯以外の媒体で。Forget-me-notのコミック早う)。 また、帯の【メカ×少女×ハードボイルド】、可愛らしいあんばる、そしてボリューム増し増しのおっぱい、と明らかに新規さんウェルカムな感じを醸しだしていますが、それなら中身も、もうちょっとあざとくしたほうが良かったのでは? と思わなくもありません。 15cm程度の死闘トップへ
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第3部 「竜の嘶き」 「ドラゴン-1」 2030年代に登場した飛行能力を備えた航空MMS。 それらは多種多様なメーカーから出された数を含めれば数え切れないほどの多種多様性を誇ったが、一応の一定の安定した戦果をあげる活躍をし、:名機:とよばれるワクで絞っていくと、だいたい10機種くらいになる。 フロントライン社の天使型シリーズ「アーンヴァル」、戦闘機型「飛鳥」、スタジオ・ルーツ社製サンタ型「ツガル」、マジック・マーケット社セイレーン型「エウクランテ」コウモリ型「ウェスペリオー」、アキュート・ダイナミックス社製ワシ型「ラプティアス」ディオーネ・コーポレーション社製戦乙女型「アルトレーネ」 といったところが安定した強さを持っている。 もちろん、各神姫に対する評価は、オーナーにより、また神姫マニアの見方によっていろいろ違ってくる。 例えば旧式で性能的には最新鋭の武装神姫には劣っていても、局地迎撃用や戦闘可能時間の違いとか、火力、防御力、搭載能力、稼働率、整備製、コストパフォーマンスなどの点も考慮にいれなければならない。 このような観点から、総合的に採点してみると、天使型「アーンヴァル」、セイレーン型「エウクランテ」、戦闘機型「飛鳥」などが、武装神姫の中で空中戦ナンバー1を競うことになる。 アーンヴァルは、スピード、ダッシュ力、上昇力および安定性、生産製の高さで、他の航空MMSよりあまりある戦闘能力を保持している。 また「エウクランテ」は軽量で高機動、また支援ユニットに可変することで高速一撃離脱の戦闘方法で一世を風靡した。 「飛鳥」はずば抜けた運動性能で、登場した2030年代初期から中期にかけて、他の航空MMSを徹底的に痛めつけている。 いずれも武装神姫の可動初期からはたらき、改良されながら長期にわたって活躍したことが、他の航空MMSよりもポイントを稼いだ決め手になっている。 もちろんその他の「ツガル」「ウェスペリオー」「ラプティアス」「アルトレーネ」にしてもそれぞれ長所を大きくいかしての活躍が名神姫として数えられている要素になっている。 それらの中で、本来ならもっと高く評価されてもいいはずなのに、地味な存在なのがカタリナ社製の「ドラッケン」シリーズである。 「ドラッケン」は航空MMSの中でも「アーンヴァル」とほぼ同等の古い航空MMSである。上記3機が軽装甲、機動性と格闘戦闘を重視したのに、対してドラッケンは頑丈さと火力、防御力で相手の小技を跳ね返す真逆の発想で設計された。 強固な装甲と重火力、それなりの機動性を持つこのドラッケンシリーズは万能戦闘機として結果的に成功をおさめ、その合理性を立証した。 2041年10月16日 天王寺公園神姫センター 第3フィールド森林ステージ ズンズズン・・・ドン・・・ドドン・・・ 天王寺公園の一角、森の中の小川を挟んで、大砲を背負った神姫が激しい撃ち合いを行なっている。 少しはなれた小高い丘で、フィールド参加神姫の待機所で複数の重武装の神姫たちがトレーラに乗って砲声を聞きながらのんびりと出番を待っている。 チーム名「ドラケン戦闘爆撃隊」 □戦闘爆撃機型MMS「シャル」 Sクラス □戦闘爆撃機型MMS「ライラ」 Aクラス □戦闘爆撃機型MMS「セシル」 Aクラス オーナー名「伊藤 和正」♂ 27歳 職業 工場設備関係メーカー営業員 とくに話すこともない知れた顔ぶれ、彼女たちは同じ伊藤の所有する神姫たちだ。 伊藤はのんびりと新聞を読んで戦闘中のフィールドからの応援要請を待っている。 シャルは自慢の武装の2mm機関砲を布で綺麗に拭いて手入れをしている。 ライラはぼけーと口を半開きにしてどんよりとした曇った秋空を眺めている。 セシルは地面を這うアリを観察している。 ラジオもネットもなく、お互いがそれぞれ別のことをしながらただ、ゆっくりと時間が過ぎるのを待つ・・・・ ダガガガガッガガン!!!ガッガガガガン!! ふいにカン高い機械音が鳴り響き、ボンボンと黒煙が戦場になびき、樹脂の焼ける独特のにおいが流れてくる。 ポーンと情けないメールの着信音が待機所に設置されているメールボックスに届く。 伊藤がカチカチとノートパソコンのメールボックスを見て待機しているシャルたちに話す。 伊藤「出撃だぞ、手前の赤チームから救援要請だ。敵の神姫にアイゼンイーグルを装備した重火力の武装神姫が出たらしい」 シャル「了解、ドラケン戦闘爆撃隊、出撃します」 ライラがエンジンのスタートキーを回す。 ドルン、ドルンンドルルン・・ルンルン・・・グオオオオオオンン まるで獣の吼え声のように強力なエンジンが唸り、心地よい振動を生み出す。 セシル「敵機は?今日は上がってくるのでしょうか?」 セシルはぼつりとつぶやく。 シャル「俺たちに救援要請を出したってことは向こうも迎撃機を出すってことだ、足の速いアーンヴァルか、もしくは格闘戦に優れた戦乙女か・・・」 ライラ「こちらドラケン2、出撃準備完了」 セシル「ドラケン3、いつでもいけます」 シャルがうなずく。 シャル「マスター、ドラケン戦闘爆撃隊、出撃準備完了、今日の武装は、2mm機関砲、多連装ロケット砲、マイクロミサイルを搭載しています」 伊藤「よし、目標は地上で戦っている陸戦MMSの支援爆撃だ。迎撃機が出るかもしれない、十二分に注意しろ」 シャル「了解しました」 ライラ「はっ」 セシル「YES、SURE」 ドドドドドン!!ズドドドドドッ!! 強力なアイゼンイーグルガトリングキャノンを構えた悪魔型神姫が前線を押し上げている、横には数体の夢魔型が護衛として付き添っている。 くぼんだ塹壕に、火器型のゼルノグラードとヤマネコ型が身動きがとれずに必死に応戦していた。 ヤマネコ型「畜生、応援のドラッケン部隊はどーした!」 火器型「まだです!まだ来ません!!」 片腕を失った騎士型が荒い息を吐きながら舌打ちをする。 騎士型「あの重機を仕留めないことには、5分も持たないぞ!!!」 剣士型「おい!!あれを見ろ!」 キラキラと黒光するネービーブルーの機体を輝かせながら、上空から多連装ロケットランチャーで爆装したドラッケン戦闘爆撃機型MMSが3機、急降下で舞い降りる。 シャル「いいか!味方の塹壕まで2メートルと離れていない、慎重に爆撃しろ!」 ライラ・セシル「了解」 バシュバシュバシュバシュッ!!! 白い噴煙を吐きながらシャルたちは一斉に悪魔型たちに向かってロケット弾を全て打ち込んだ。 夢魔型「ド、ドラッケン戦闘爆撃機!!」 悪魔型「迎撃ッ!!」 悪魔型が強化アームでがっしりと構えたアイゼンイーグルを向けて、攻撃しようとするが、ガトリングは砲身が回転するまでのわずかな空転時間を要する。 それが致命的なタイムロスとなり、悪魔型の命運を分けた。 ドドドンッ!!!ズッドオオム!! 数十発のロケット弾が悪魔型と夢魔型数体を巻き込んで大爆発が起きる。 □悪魔型MMS 「ノーザス」 Aクラス 撃破 □夢魔型MMS 「リセム」 Bクラス 撃破 □夢魔型MMS 「パッセル」Bクラス 撃破 シャル「命中命中!」 ライラ「ドンピシャリ!」 セシル「全弾命中!」 下をちらりと見ると味方の神姫たちがしきりに手を振ったり被っているヘルメットや兜を振って声援を上げている。 火器型「助かったぜ!おまえんとこのマスターによろしくな!」 ヤマネコ型「さすがはドラケン隊だ!頼りになるぜ!」 騎士型「次もよろしく頼むぜ!!」 ぐるりと味方の神姫たちの上空で機体を振りながらバンクするとシャルたちは帰り道に急ぐ。 行きはどんよりとした曇り空が今は、風が出てきたのか晴れてきて見通しがよくなってくる。 シャル「・・・まずいな、晴れたきたぞ」 シャルは嫌な悪寒がし、キョロキョロと辺りを警戒する。 チカチカと上空から黄色い閃光が瞬く。 ドガドガドガン!! 右翼を飛んでいたライラの機体を黄色い閃光が貫いたと思った瞬間、ライラの体がバラバラに空中分解して爆散する。 □戦闘爆撃機型MMS「ライラ」 Aクラス 撃破 セシル「ライラッ!!」 ウオオオオオオオオオオオオオンン!!! シャルたちの上空から4機のアーンヴァルMK-2テンペスタが雲の切れ目から急降下で襲いかかって来た。 シャル「畜生!!待ち伏せされていた!!」 バスンバスン・・・ 全身穴だらけのボロボロの体でシャルは伊藤の待つ待機所まで、黒煙を吹きながらたどりつく。 伊藤がバッと新聞を投げ出し叫ぶ。 伊藤「なんてこった、行きは3機で帰りは1機か!」 ガッシャーーン!! 地面に胴体着陸してバラバラになるシャルの武装。 シャル「クソッタレ!」 シャルはむくりと立ち上がると砂埃を払う。 伊藤「大丈夫か?シャル!!他の連中は?」 シャル「セシルは手誰のアーンヴァルに追い詰められて自爆した。ライラは粉々にされちまった」 伊藤「なにがあった?」 シャル「たぶん、アーンヴァルの改良型だ。いきなり雲の中から飛び出してきた」 伊藤「しかし、それにしてもよく無事に戻ってきたな」 シャル「こいつの重装甲のおかげだ。もっともこの重装甲のおかげで逃げ切れなかったという点もあるがな・・・」 伊藤はぽりぽりと頭を掻く。 伊藤「しかし、待ち伏せとはな・・・」 シャルは遠い目をして答える。 シャル「俺たちを襲った連中は知ってやがるんだ。鈍重な俺たちが爆撃にくるってことをな」 天王寺公園の一角にあるこの神姫センターは立地条件に恵めれた大型神姫センター店である。 市営地下鉄、私鉄、電気軌道の路面電車、路線バス、高速バスが集中するターミナルとなっており、周辺はキタ・ミナミに次ぐ規模の繁華街を形成している。ミナミの難波とは大阪市街の南玄関としての機能を二分する。 大型商業施設には、百貨店、地下街も充実しており観光地としての表情も併せ持っており、老若男女を問わず賑わいを見せている。 そのため、老若男女を問わず、近隣の郊外から暇をもてあました強力なオーナーが集中し関西でも指折の激戦地区となっていた。 シャルが他の神姫たちと軽い雑談をする。 ぎらついた目つきの悪い黒い天使型のエーベルと、胡散臭いステルス戦闘機型のフェリアだ。 □ 黒天使型MMS「エーベル」 Sクラス オーナー名「斉藤 由梨」 ♀ 22歳 職業 商社OL □ステルス戦闘機型MMS 「フェリア」 Sクラス オーナー名「今宮 遥」 ♀ 23歳 職業 商社営業員 エーベル「そうかーライラもセシルも落とされたのか」 フェリア「運が悪かったんだろ、よくあることだ・・・気にするな」 シャルはこめかみを押さえて顔を歪めて話す。 シャル「2人はバラバラにやられちまってオーバーホールだ。直るのに1週間はかかるよ」 ファリア「テンペスタの小隊か、厄介だな・・・この辺りにはあんまり見かけなかったんだが・・・」 シャル「テンペスタにこっちの武装で勝っているのは装甲と火力だけだ。よほど有利な条件でなければ空中での格闘戦では勝てない」 シャルはエーベルやフェリアにも警告する。 シャル「お前たちも注意しろよ」 エーベル「・・・」 フェリア「・・・」 シャル「まあ、注意したってやられるときはやられるんだがな・・・」 夜になり、あたりは鈴虫やコオロギの秋の虫たちの音色で溢れる。 騒がしいまでの虫の音色がピッタと止まる。 ズズンドンドドドン・・・ズンズズン・・・ 低い砲声が唸り、爆発音が響く、そして機関銃のカン高い音と照明弾が夜空を照らす。 数機のコウモリ型が夜襲を仕掛け、フィールドで砲台型が迎撃の対空攻撃を仕掛けている。 天使型のエーベルが塹壕からひょこりと顔を出す。 エーベル「やれやれ、今日も懲りずにきやがったな、コウモリの連中」 エーベルはギュムと柔らかい何かを踏みつける。 シャル「いてェ、足を踏むなよエーベル」 エーベル「おおっとシャルか?」 シャルがヒラヒラと手を振る。 シャル「今日はコウモリ型の連中しつこいな」 エーベル「フェリアの奴が露払いにさっき出撃したぜ?」 シャルはちらりとエーベルを見る。 シャル「オマエは行かなくていいのか?」 エーベルは肩をすくめる。 エーベル「連中、逃げ足が速いからな、ちょっとでも不利になるとすぐ逃げ出す」 はあーーーとシャルは重いため息を吐く。 シャル「待ち伏せが来るってことは分かっていたはずなんだけどな・・・それをしっかりとライラたちに警告できなかったのは俺のミスだ」 エーベル「シャルを狙ったテンペスタは機関銃が故障していたんでしょう。でなきゃシャルもやられていた。シャルだって危なかったんだ、戦いなんてものはどうしようもないときのほうが多いんだ。イチイチ気にしてたら気が持たないぜ」 シャルは顎に手を付いて考え事をする。 シャル「・・・・・・」 エーベルが顔を上げる。 いつの間にか辺りは静さを取り戻し、虫の音色が再び聞こえてくる。 エーベル「コウモリ型もどこかにいっちまったようだ」 シャルがきょろきょろと警戒する。 シャル「今日は戦艦型の艦砲射撃は無さそうだな」 エーベル「明日も速いし今日は早めに寝るよ」 秋の夜は、少し肌寒い・・・・ To be continued・・・・・・・・ 次に進む>「ドラゴン-2」 トップページに戻る
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【武装神姫】セッション1-0【SW2.0】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm17931932
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【武装神姫】セッション2-4【SW2.0】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm18827180
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【武装神姫】セッション1-3【SW2.0】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm18179759
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ウサギのナミダ ACT 0-3 □ その日の土曜日、俺は拾った神姫をつれて、海藤の家へ向かった。 海藤は、高校時代からの友人だ。 武装神姫を仲間内で一番に始めたのが彼だった。 俺の仲間内はみんな、海藤の影響で神姫を始めている 海藤が連れている神姫がうらやましくて、俺も神姫を持ちたいと思うようになった。 それほど、彼と彼の神姫の関係は良好だったし、その神姫は魅力的だった。 いまでも仲間内で一番神姫に詳しい。 だから、今回のことも、彼を頼ることにしたのだった。 電車に揺られること30分ほど。 いかにもベッドタウンの駅、というところで私鉄を降りる。 海藤の家までは歩き慣れた道だった。意識もせずに角を曲がり、住宅街の町並みを歩く。 俺は程なく目的の家の前に立った。インターホンのボタンを押す。 古びているが、普通の一軒家である。 海藤はここに独りで住んでいる。 しばらくして、玄関の扉が開き、少し小太りの、小柄な男が顔を出した。 「よお」 「よく来たね、ささ、入って入って」 海藤は機嫌よく、俺を招き入れる。 一軒家は独りで住むには広すぎる。 海藤が趣味を満喫するには最適だが、やはり寂しくなるものらしい。 俺が時折顔を出すと、必ず歓待してくれる。 俺は海藤に続いて扉をくぐる。 すると、 「いらっしゃいませ」 鈴の鳴るような声が、海藤の肩あたりから聞こえてくる。 俺が視線を向けると、そこには神姫がにこやかに微笑んでいた。 「こんにちは、アクア。お邪魔するよ」 このアクアの微笑みにやられて、海藤の家からの帰りに神姫ショップに寄って、何度イーアネイラ・タイプのパッケージを手に取ったか知れない。 高校時代の仲間のほとんどが、このアクアの笑顔をにやられて、海藤がうらやましくなって、神姫を始めた。 それほど、イーアネイラのアクアは魅力的だった。 海藤の招きで通されたのは、広い居間だ。 その広い壁の一面を、巨大な水槽が埋めていた。 そして中には色とりどりの魚達が優雅に泳いでいた。 海藤のもう一つの趣味がこれだ。 熱帯魚の飼育だけでは飽きたらず、いまは学業そっちのけで水族館でアルバイトをしている。 そんな海藤が人魚型の武装神姫を選んだのも、当然の成り行きだ。 俺は居間に置いてある小さなテーブルに手みやげをおく。 海藤はそのままキッチンに入り、コーヒーを入れてきた。 手みやげはミスドのドーナッツである。男二人のくせに、俺達は甘いものに目がなかった。 しばらく俺達は、何も言わずにドーナッツを頬張り、コーヒーを味わった。 二つ目のドーナッツを腹に収めたところで、海藤が切りだした。 「それで、神姫の素体交換だって?」 「ああ」 ちょうど俺も二個目を食べ終え、傍らにあったバッグに手を伸ばす。 中から大きめのハンカチにくるまれたものを取り出す。 「これは……」 海藤は、俺が拾ってきた神姫をつまみ上げる。 メンテナンスモードになっている神姫は、ぴくりとも動かない。いまはただの人形同然だ。 手足に巻いた包帯が痛々しい。 そう思わせるほどに生々しい肌の質感が、この神姫にはある。 「こんな素体は見たことがないな」 「言ったろう、訳ありだって」 「見たところ、素体の外皮は妙に生々しくて継ぎ目もないけど……どうやら中身は規格からはずれてはいないみたいだ」 「できそうか?」 「交換だけなら、そう時間もかからないよ」 海藤は慎重に頷いて、そう請け負ってくれた。 「よろしく頼む」 俺が言うと、海藤は早速、リビングの端に据えられたパソコンに、その神姫を持っていった。 すでにスタンバイされているクレイドルの上に載せる。 アクアが海藤の肩から飛び降り、自身もクレイドルのような装置に収まった。 「アクア、バックアップ開始」 「はい、マスター」 アクアは装置の中で目をつぶる。 すると、パソコンの画面にいくつかウィンドウが自動的に開いていく。 アクアがパソコンを操作し、あの神姫の記録をバックアップしているらしい。 ……バックアップ? 「そのまま素体を入れ替えるのなら、念のためバックアップして置いた方がいいよね」 海藤が当たり前のことのように言う。 だがしかし、 「ああ、それはもっともなんだが。アクアはそいつの記録を見ない方がいい……」 「ひっ」 遅かった。 装置の中で、アクアは目を見開いて愕然としている。 「ストップだ、海藤」 俺が言うよりも早く、海藤の手がパソコンを操作していた。 神姫からのメモリの読み出しがストップされる。 「アクア、大丈夫かい?」 「は、はい……ちょっと驚いただけです」 やはりアクアには刺激が強すぎたようだ。 海藤が、パソコンにバックアップされたデータを呼び出した。 ディスプレイに、昨夜俺が見た画像の一部が表示される。 「これは……なんだ、これは」 いままでに見たことのない苦い顔で、海藤が呟く。 「お察しの通りだ……言っただろ、訳ありだって」 「……」 海藤は画像が表示されていたウィンドウを消すと、パソコンのいすにもたれ掛かって座り、ため息を一つついた。 そして、俺に向き直ると、 「なあ遠野……悪いことは言わない。この神姫のオーナーになるのは、やめた方がいいと思う」 「なんだと?」 「ごめん、怒らないで聞いてくれ。君のことを思って言ってるんだ」 海藤の真剣な眼差しに、俺は怒りを引っ込めざるを得なくなる。 「君がどんな神姫のオーナーになろうと、それは自由さ。 でも、この神姫自体が危険な代物なんだ。 この妙に人間くさい素体だって、違法製造のカタマリだよ。 いまの神姫の記憶だって、へたすれば、持っているだけで犯罪だ。神姫風俗自体が違法なんだから。 この神姫のオーナーというだけで、犯罪者扱いされる可能性があるんだ。 武装神姫はホビーだ。楽しい趣味の世界だよね? そんな神姫の世界に、現実のハイリスクを伴ってまで、踏み込む必要があるかい?」 俺は、海藤の落ち着いた語りに、冷静になって考える。 海藤は話を続ける。 「君のオーダーは、記憶や性格はそのままに、ユーザー登録をクリアして、素体を交換すること、だよね。 でも、記憶を消去して、全く新しい神姫としてオーナーになることもできるんだ。 あの記憶がある限り、神姫風俗にいた神姫であることが露見するリスクはつきまとう。 そして、どんなに君が否定しても、神姫風俗とのつながりを疑われるよ。 そうまでして、このままの神姫のオーナーになる必要があるかな? そんなリスクを犯さなくても、いいんじゃないかって、僕は思うんだ」 俺はうつむいて、海藤の言葉を反芻した。 こいつは、本当に俺のことを心配して言ってくれている。 そういう奴だ。 海藤の言うリスクについても、わかっているつもりだ。 「……だけどさ」 だが。だがしかし。 「どんな神姫にも幸せになる権利が、あるんじゃないのか?」 「つらい記憶を抱えたまま新しいオーナーの神姫になることが、この神姫の幸せかい?」 「わかってる……わかってるさ。こんなのは、俺のエゴなんだってことは」 でも、譲れなかった。この気持ちだけは。 「こいつさ……目が覚めて、泣きながら俺に言うんだぜ……壊してくれって」 「……」 「ほっとけないだろ。俺がはじめて神姫にと望んだ奴が、自殺志願なんて……俺が何かできる訳じゃないけれど……でも、教えてやりたいと思った。 こいつがこいつのままでも、いいんだって……そんなに悲しい言葉言わなくたって、俺がこいつを望んでいるって…… 普通の神姫として生きられるんだって、教えてやりたいんだ」 「……」 「……だめか?」 上目遣いに見た俺に、海藤は諦めたような大きなため息を一つついた。 「まったく……君らしいよ」 「いいのか?」 「君がそこまで言うなら、いいさ。僕はもう、何も言わないよ」 「ありがとう、海藤……」 俺は安堵のため息をついて肩を落とす。 やはり持つべきものは友達だ。 「それじゃあ、さっさと終わらせますか」 海藤は元気にそういい放つと、アクアの代わりにバックアップの操作をした。 作業机に工具を並べていく。 手持ちぶさたになったアクアが、海藤の様子を眺める俺に近寄ってきた。 「あの子はきっと大丈夫ですね」 「君のマスターが、作業するからか?」 「いいえ」 確信を持ったまなざしで、アクアは俺を見上げて言った。 「遠野さんが、こんなに想ってくれるんですから」 こんな気恥ずかしいせりふを、神姫からぶつけられるとは思わなかった。 俺はあまりの照れくささに、アクアの微笑もまともにみられず、ひたすらにそっぽを向いた。 「よし、これで終わりだ」 海藤が明るい声でそう宣言した。 パソコンのキーを一つ、軽く叩く。 パソコン脇のクレイドルには、あの神姫が横たわっている。 痛々しい包帯は、もうない。 愛らしいヘッドはそのままに、新品の身体に交換されている。 いま、パソコンからクレイドルを通して、神姫にデータがダウンロードされている。 さきほどバックアップされた過去の記録はもちろん、そもそも削除されていた、武装神姫としての運動プログラムや装備の運用プログラムなども含まれる。 「最低限の格闘用データと銃撃戦用データは入れておいたよ。 装備はこれから選ぶんだろう? その装備にあったデータを後から追加すればいい」 海藤はそう説明した。 ありがたい配慮だ。さすが長い付き合いだけに、俺のことをよく分かっている。 俺はこの神姫のために、オリジナルの武装を用意するつもりだった。 何者でもない、俺だけの武装神姫のための装備を。 やがて、ディスプレイの作業表示が100%を示す。 俺は息を飲む。 その神姫は新たな姿で目覚めようとしている。 PCから、作業完了の電子音が軽やかに鳴り響いた。 ■ 軽やかな電子音とともに流れ込んできた信号が、わたしに覚醒を促す。 わたしは、のろのろと瞳を開く。 飛び込んできた光景は、今まで見たこともないものだ。 おおきな、おおきなガラスの器に、水がたくさん貯められており、そこに色とりどりの魚が踊っていた。 まるで夢のように現実感がない。 「状態チェック、オールグリーン。無事に目覚めました」 きれいな声がすぐ隣から聞こえた。 神姫用のポッドユニットだろうか。 そこから一人の神姫が出てきた。 きれいな人。 わたしのメモリに入っている情報から、イーアネイラ・タイプの神姫と分かる。 彼女は、わたしににっこりと微笑みかけると、視線で正面を見るように促した。 そこには、一人の男性がいた。 眼鏡をかけた端正な顔。 わたしを自分の神姫にしたいと言ってくれた、あの人だ。 「あの……」 わたしが自分の思いを言葉に紡ぐより早く、システムプログラムがわたしに口走らせる。 「オーナーの登録をします。名前を音声、またはPCのキーボードから入力してください」 わたしの瞳は、目の前にいる端正な顔を捕らえている。 わたしを連れてきてくれた人。 わたしに違う世界を見せてくれると言った人。 「遠野貴樹」 わたしは、その人の名を初めて知った。 その名前はわたしの深い部分に滑り込み、刻まれた。 「あなたをなんとお呼びすればよろしいですか? 呼び方を入力してください」 「マスター」 答えは決められていたようで、すぐに返事が来る。 そして次は…… 「わたしの名前を入力してください」 プログラムが口走らせる事務的な口調とは裏腹に、わたしの心はドキドキと高鳴っていた。 大きな期待、そしてもっと大きな不安。 23番でもなく、名無しでもない。お客さんが勝手につける一時の名前でもない。 ただひとつの、わたしの名前。 「ティア」 そっけないくらいの口調で、わたしの瞳に映る人は応えた。 わたしは事務的な口調で確認を取ると、すぐにそれは了承された。 意志が、起動プログラムから、わたしに戻ってくる。 「あ……」 わたしは改めて目の前の人を見る。 彼の名前は遠野貴樹。わたしの…… 「マスター……」 「ティア、でよかったか? おまえの名前」 いいもなにも。 初めて確たる名をもらったわたしは、はじめて自分が存在していることを確認した。 何者でもなく、ティアという名の神姫として。 「そんな……わたしなんかには、もったいない名前です」 思ったことを口にすると、 「『わたしなんか』って言うな」 低い声で怒られた。 わたしはマスターに怒られてばかりいるような気がする。 わたしは少しおびえて、マスターを見上げた。 マスターは何ともいえない表情で、ふい、と目を逸らす。 ……なにか、わたしはマスターの気に障るようなことをしてしまっただろうか。 わたしはおろおろとしながら、マスターを見上げるしかできなかった。 マスターは何を怒っているのだろう。 想像もつかない。 わたしはまだ、この人のことを何も知らないのだ。 でも、マスターに怒られるのは悲しくて、つらくて、情けないことのように思えた。 だから、わたしの瞳から、自然と滴が溢れてくる。 「なに泣いてるんだ」 「だ、だって……」 「……だからティアって名前にしたんだ。泣き虫だからな、おまえ」 ティア。涙の意味だと分かる。 意地悪な言葉をそっけないくらいの口調で言い放つマスター。 わたしは、どんな表情をしていいか分からない。 分からなくて、マスターのことも分からなくて、心に寄り添うこともできなくて、心細くて、また涙が溢れてきてしまう。 結局、泣きやまないまま、わたしはマスターに連れられて帰路についた。 マスターが意地悪なことを言ったのは、実は照れ隠しだったことを知るのは、ずっとあとのことだった。 □ 「すまなかったな、変なところを見せてしまって」 「いや、いいよ。君の神姫がどんな子かもよく分かったし」 海藤の家の玄関。 帰り際に俺は、海藤に軽く謝った。 正直、ティアの態度にはまいった。 これでは俺が自分の神姫を泣かせているみたいではないか。 結局、ティアはアクアにずっと慰められていたが泣きやまず、いまも俺のカバンの中で泣き続けているようだった。 覚悟はしていたが、先が思いやられる。 「それにしても……」 見送りに来た海藤は、にやにや笑いを顔に貼り付けて、 「なんだかんだ言って、やっぱり君は世話好きのおせっかいだよね」 とのたまいやがった。 「ほっとけ!」 俺はクールで理知的なキャラで通っているのだ。 自分もそう望んでいるし、多くの友人がそういう印象を抱いてくれている。 しかし、付き合いの長い友人になると、それが化けの皮と言いやがる。 熱いハートを持った義理人情の男と思われているのだ。 そういう性格が悪いことだとは思っていないが、普段から俺はスマートでいたいと思っている。 暑苦しい奴だと思われるのは心外だし、御免だった。 俺達のやりとりを見て、海藤の肩の上で、アクアが笑っている。 いつかティアも、こうして笑えるようになるだろうか。 それはきっと、これからの俺次第なのだろう。 そう思うとなんだかとてつもなく大変なことのような気がしてきて滅入る。 だが、それを成し遂げたいと、切に願っている自分がいるのだ。 不機嫌な表情の俺に、海藤はハンカチか何かの包みを俺に差し出した。 「これは……」 「こっちで処分しようかと思ったけど、まあ、何かの役に立つかも知れないし」 それは、ティアの元の素体だった。 妙に生々しい感触の、小さな人型。 持っているだけで違法かも知れないその素体は、正直、処分してもらっても、かまわなかったのだが。 「もともと君の持ち物だ。君がどうするのか決めるのがいいよ」 「……」 俺はしばらくその包みを見つめた後、そっとバッグにしまいこんだ。 「迷惑をかけたな、恩に着る」 「そう思うなら、また遊びに来てよ。今度はティアも一緒に、さ」 気のいい友人はそう言って笑ってくれた。 ◆ 遠野の背中を見送りながら、アクアが口を開いた。 「マスター……あの二人、うまくいきますよね?」 「……アクアはどう思う?」 「うまくいくと思います、きっと。だって、遠野さん……あんなにティアのこと気にかけているのですもの」 海藤は難しい表情をしながら、アクアの言葉を聞いていた。 やさしいマスターには珍しく、厳しい目で、遠ざかる友人の背中を見つめていた。 「マスターは、そう思われないのですか?」 「わからない……わからないよ」 嘆息するように言葉をはく。 「二人の仲は、きっとうまくいくと思うよ。遠野はああ見えて世話好きだし、きっと長い時間をかけて、ティアを自分の神姫にしていくんだろうね。 大変だとは思うけど、その覚悟もできていたみたいだし……」 「だったら……」 「問題はあの二人じゃないよ。もっと他のことさ。 ティアは……普通の神姫じゃないんだ。 神姫風俗にいることが知られたら、どんなことになるか……見当もつかないよ。 何かあったときには、僕たちの思いもつかないような試練に晒されるかも知れない。 ……それが心配なんだ、とても」 遠野の背中が見えなくなり、海藤はきびすを返した。 ゆっくりと門の中へ入る。 相変わらず厳しい表情を崩さない海藤に、アクアは話しかけた。 「それでも……わたしはよかったと思います」 「なぜ?」 「あんなに嬉しそうな遠野さん、初めて見ました。 いつも神姫のオーナーになりたいって言って、そのたびに寂しそうな表情をしていましたもの。 遠野さんにあんな嬉しそうな表情をさせたのは、間違いなくティアですから……」 「そうか、そうだね……今は、新しい神姫のプレイヤーが生まれたことを、素直に喜ぶべきだね」 「はい!」 いつも前向きなアクアに何度救われたことだろう。 この笑顔にあこがれて、友人たちは皆神姫を始めたが、誰よりもアクアの笑顔にメロメロなのは、マスターである自分だということを、海藤は自覚していた。 次へ> トップページに戻る